売り上げ激減で支払いに悩まされ、バッシングに苦しむ日欧「夜の街」の素顔
自粛要請が緩和され、無観客ながらプロスポーツも再開し、少しずつ日常が戻ってきている昨今。しかし、その一方でコロナウイルスの感染者数は再び増加傾向にある。そして、その要因のひとつとして政治家やメディア、ネット世論からバッシングを受けているのが、「夜の街」だ。
そもそも「夜の街」とはなんなのか? 今回、新たに感染が確認されたのは接待飲食と呼ばれる業種の店舗だ。しかし、「夜の街」には一般飲食店、深夜酒類提供飲食店、その他さまざまな業態が混在している。
行政やメディアが「夜の街」という曖昧な表現を使うことによって、さまざまな業種を一括りにするのは、スケープゴートにしようとしていると批判を受けてもおかしくないだろう。というか、ハッキリ言って営業妨害だ。
(参照:TBS News、日テレNEWS24)
今後はより具体的な表現に転換していく動きもあるようだが、新型コロナウイルスが問題となり始めてから今にいたるまで、こういった表現が使われ続けてきた影響は小さくない。
(参照:時事ドットコムニュース)
「職業に貴賎はない」とは言うものの、明らかに「夜の街」へのバッシングは度を超えている。コロナショック下で甚大な被害を受けながらも、ビジネスとして正しい手続きを経て真面目に営業している店舗が、社会のストレスや不安の捌け口になっている感は否めない。
もちろん、「夜の街」が「わかりやすい標的」となっているのは、日本だけではない。2月より筆者が滞在している欧州でも似たようなケースはいくつも挙げられる。
本稿では、日本の居酒屋と欧州のパブ、それぞれがコロナショック下でどのような影響を受けているのか考察することで、彼らへの偏見や疑いの眼差しを晴らせればと思っている。
ポーランド中北部の都市・トルンでは、創業25年のパブ「黒いチューリップ」のオーナーに話を聞いた。一般的に、欧米では日本よりも政府からの補償は手厚いようなイメージがあるが、実際は彼らも過酷な戦いを強いられているようだ。
「ウイルスが発生し始めた当初は、我々(ポーランド)は大丈夫。インフルエンザのようなもので、気をつければいいと思っていました。報道で大勢の死者が出ていることを知るまでは、お店を閉めなければいけないような状況も考えていませんでしたね」
しかし、ご存知のとおり欧州でもコロナウイルスは猛威をふるうこととなり、「黒いチューリップ」は約2か月の休業を余儀なくされた。
「その間、収入はゼロ。家賃や大量の発注品の支払いに悩まされました。政府からの小さな支援もありましたが、政治家たちの争いを見ている間、我々は苦しんでいた。お店を閉めて逃げるべきか、待つべきか、どれが一番いいのか悩みましたね」
日本における特別定額給付金のような、個人レベルでの支援のほかに、店舗に対しても補償はあったものの、それは微々たる額だったという。
「支援金はすぐ消えてしまいましたね。申し込むにも書類があまりに多くて、専門家に頼まなければいけませんでした」
現在は営業を再開しているものの、依然厳しい状況が続いている。また、日本のような風評被害も少なくないという。
「売り上げは60〜70%程度まで戻りました。残りは(授業がリモートで行われている)学生客だと思います。普通の仕事はしてもいいけど、パブはダメという風潮はありますね。議論があるのは仕方ない。ただ、店内や利用客の消毒液の費用などもタダではありません。残りの30%ぐらいを補償してくれればいいのにとは思いますね」
スケープゴートを生む「夜の街」表現
収入ゼロのなか、家賃や支払いに苦しむ
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