インターネットメディア「Choose Life Project」のYou Tubeチャンネルより
テレビではなくインターネットメディアが実現させた候補者討論会
2020年7月5日に投開票を迎える
東京都知事選。6月18日の告示を過ぎても候補者の討論会が開かれない異常事態が続いていたが、投開票が約1週間後に迫った6月27日、ついに候補者による生討論が実現した。インターネットメディア「
ChooseLifeProject」の主催により、津田大介氏を司会に迎え、4人の候補者(
現職・小池百合子氏、元日弁連会長・宇都宮健児氏、れいわ新選組代表・山本太郎氏、元熊本県副知事・小野泰輔氏)が約1時間にわたって討論した。
この討論会では主催者が用意した
10の質問に、4人の候補者が○×形式で答えて政策の違いを浮き彫りにしたり、候補者や司会者からの指名制の質問に答えることで都政に対する具体的な考えを各候補者が示して進められていった。
本記事では、これまでオープンな質問に答える機会が少なかった
現職・小池氏の3つの回答に着目し、どのように小池氏が質問に答えたのかを一字一句漏らさずにノーカットで信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(
青はOK、
黄は注意、
赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)
質問に対する小池氏の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。
<色別集計・結果>
●小池氏:
赤信号48%
黄信号25%
青信号13%
灰色14%
(*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない)
赤信号と
黄信号が7割以上を占めており、
青信号はわずか13%。つまり、
質問にはほとんど答えていない。また、
不要な言葉や意味不明な言葉を意味する
灰色が14%もあり、
何を言っているのか理解しづらい場面が度々見受けられた。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。
また、1時間に及んだ討論会全体の様子はChooseLifeProjectが、映像は
Youtubeで、文字起こしは
noteでそれぞれ公開している。
質問1分、回答1分の制限時間付きで実施された候補者同士の質問のパートにて、まず山本太郎氏が小池氏に対して質問。テーマは山本氏自身が当事者であるロスジェネ世代の雇用問題について。その質疑は以下の通り。
山本太郎氏:「国として、あの、ロストジェネレーション、就職氷河期世代の方々をまた新たな呼び名で呼ぶことになりました。人生再設計第1世代。で、えー、まあ、これに沿ってというわけではないんですけど、例えば兵庫県の宝塚市ではロスジェネ世代の採用を、えー、正規での採用を進めるって話になったんですけど、これ3人の枠に1800人が申し込み殺到したという状態なんですね。この、えーと、これまでの国の施策によって、人生が大きく毀損されたという世代に対して東京都として、このロスジェネ世代に対し雇用枠みたいなものは考えてらっしゃいますか?」
小池百合子氏:
「
あの、既にですね、今回は協力金ということで特に各事業者の皆様方、えー、今回のホームステイ週間を始め、えー、緊急事態宣言下において、感染の拡大の防止に努めて頂いた皆様に最大100万円、えー、支給するという形で事務作業も伴っておりました。(
赤信号)
そこで、例えば大学生の方もそうなんですけど、あのー、おー、その、まあ、なんて言うんでしょうか、あー、その生活の糧を稼ぐ、その場を確保するために600名、えー、ここで、えー、まず採用させて頂いた。(
赤信号)
それから何よりもですね、コロナの、この、おー、問題、えー、ですね。いかにして抑え込みながら経済を動かしていくかということが一番重要なことだと思います。今回、この、おー、えー、既にですね、職場がお決まりであった方々がですね、えー、今回のコロナの問題で企業から雇い止めのような、えー、そういう状況にあっている方々もおられ、ということは、基本的に、このコロナの感染症をより改善・・(
黄信号)」
※司会者が1分の制限時間が過ぎていることを小池氏に注意する
小池百合子氏:「
・・ということで、取り組んでいるということであります。(
黄信号)」
小池氏の回答を見ていると
質問が何だったのか忘れてしまいそうになるので質問を改めて振り返る。山本氏の質問は
「東京都がロスジェネ世代の正規雇用を考えているか?」である。この質問に対する回答が一言でもあったであろうか? いや、
一言もなかった。
では、小池氏はいったい何を喋っていたのか。具体的に3つの段落に分けて確認していく。
まず、
1段落目は感染症拡大防止協力金の説明であり、質問と全く関係が無いため、
赤信号とした。
続いて2段落目。以下のように論点をすり替えているため、これも
赤信号とした。
【質問】ロスジェネ世代の正規雇用
↓すり替え
【回答】学生のアルバイト採用
600名の採用に繋がったことを小池氏は強調しているが、東京都が下記のリンク先*で発表しているとおり、これはあくまでもコロナでアルバイト収入を失った学生を対象としており、
ロスジェネ世代の正規雇用という質問に対してピントのずれた回答だ。
〈*
東京都 報道発表「感染症の営業により経済的に困難な状況にある大学生等にアルバイトの機会を提供します」(2020年5月12日)〉
最後の3段落目は、コロナによる雇用悪化という周知の事実を説明しているだけであり、
黄信号と判定した。また、制限時間の1分を超えたことを司会者に注意されたこともあり、最後は何が言いたかったのかよく分からない状態で回答を終えている。
この回答を受けての山本氏の以下のようにコメントしている。
山本太郎氏:「ありがとうございます。まあ、このコロナ禍において緊急的にパートタイムとして、そういった方々を雇って頂いているという認識でいいんですかね。でも、これ、あくまでも非正規。要は安定した職に就いて頂くことを考えていくことが必要だと思ってます。で、東京都としても、もちろん正規として、そういう方々、えー、なんでしょうね、ロスジェネ世代の方々を、あのー、雇用するということは既にやっていくつもりのようなんですね。ただ、
人数が少ないということなんですよ。あのー、高卒10人、大卒10人みたいな感じで。非常に東京都としては体力のある自治体なのでもうちょっと幅を広げたほうが良い。なぜならば、この先にコロナがもし収束したとしても、この先に、えー、首都圏直下であったりとか、
数々の都民の命を守らなければならない公務員をやはり増やさなければならない。その時にコロナで失業した人であったりとか、今回の、いま話にあがったロストジェネレーションのことを考慮して頂くってことが必要なのかと。私としましては、3000人雇用を増やしたいと思ってます。そのような方々に対して。で、ぜひ、あのー、誰が知事になるかはまだ分かりませんけど、その方々にもそのようなことをやって頂きたい。そう思います。」
特筆すべきは、山本氏が指摘した通り、東京都は既にロスジェネ世代を対象とした正規雇用を発表しているという点。そう。東京都は計20名のロスジェネ世代の正規雇用をわずか1ヶ月前に発表しているのだ*。
〈*
東京都 報道発表「就職氷河期世代対象 東京都職員採用試験を実施」(2020年5月29日)〉
つまり、小池氏は山本氏の質問に対して、
わざわざ論点をすり替えてピント外れの学生のアルバイト採用の話を持ち出す必要など無かった。人数が20名と限られているとは言え、質問されたロスジェネ世代の正規雇用をまさに1ヶ月前に発表したばかりだったのだから。この事実から推察すると、
小池氏は現職知事でありながら東京都が実施している政策を把握してないのでは?と疑問を持たざるを得ない。