このように申し上げると、必ずといって出される質問に、「
真理は200番目に深刻な意見に含まれているかもしれない」「
エラーの原因は50番目に深刻な意見に求められるかもしれない」ので、
異論や懸念の数だけ合意形成をする必要があるのではないかというものがある。
サイエンスの真理の探究は、とことん実施すればよい。システムのエラーの解消は、徹底的に実施しなければならない。しかし、これらは合意形成のための会議で行うのではなく、科学者や技術者が十分にリソースをかけて実施すればよいのだ。
真理の探究やエラーの解消を、合意形成の会議に持ち込むから会議が紛糾する。ビジネスディシジョンのための
合意形成の会議は、参加者が実施してみようと思う程度に合意形成できていればよい。合意できていない、深刻度合が低い異論や懸念が残っているが、
実行している間にその深刻度合が高まったら、次の会議で合意形成していけばよいだけのことなのだ。
生活様式が変化し、在宅勤務の機会が増え、
リモート会議の時間が明確に示されるようになった。この
時間内で合意できることを合意して、実行に移す。実行してみて異論や懸念が出たら、次の機会に解消する。リモート会議でファシリテーションスキルを発揮することで、
生活様式が変化してもなお、実践力を高めることができるのだ。
質問:異論や懸念の数だけプロセスを繰り返さなければならないのか
洗い上げ質問で異論や懸念が20出て、20の異論や懸念について深刻度順に掘り下げたとすれば、その後、
20回示唆質問とまとめの質問のプロセスを繰り返さなければならないのでしょうか? それでは気の遠くなるような時間が必要になると思うのですが。
回答:最も深刻な順に3回程度プロセスを繰り返せば合意できる
10人で議論する1時間の会議を、合意形成のための4質問で進行していくと、
10分もあれば洗い上げ質問により異論や懸念が出尽くします。その後、
掘り下げ質問に10分使います。
最も深刻な問題の
示唆質問とまとめの質問に10分、2番目に深刻な問題の示唆質問とまとめの質問に10分、3番目に深刻な問題の示唆質問とまとめの質問に10分。ここまでで50分で、10分の予備時間を捻出できます。
たいてい、
3番目までの深刻な問題について示唆質問とまとめの質問を行うと、これ以上議論しなくてもよいと参加者が思ってくれて、
合意形成できたという状態になります。
合意形成のための4質問による手法は、「1時間で必ず合意できる質問による合意形成手法」というタイトルで、日経ビジネスリーダーシップセミナーなどで採用されていますが、実態としても
1時間で合意形成できる手法なのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第195回】
<取材・文/山口博>