Black Lives Matterを理解するための映画10選。黒人への理不尽な暴力や迫害はなぜ起きるのか?

8:『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011)

ヘルプ ~心がつなぐストーリー~ ここでは、人種差別を受ける黒人たちの辛く苦しい心情を描いた映画を多く紹介してきたが、楽しく笑える軽快なコメディ作品も紹介しておこう。黒人のメイドたちに囲まれて育った作家志望の女性が、そのメイドたちの立場に疑問を持つことが物語の発端。もちろん劇中では悪しき差別や偏見が描かれてはいるのだが、それに対する「よくぞ言ってくれた!」と思える痛快なセリフも多いのだ。  舞台は1960年代のミシシッピ州。黒人への差別意識が他より根強い地域であり、当時はジム・クロウ法という黒人が一般公共施設の利用を禁止・制限する法律も残っていた。劇中では黒人のメイドが「白人と同じトイレを使った」だけでクビにされたりもするのだが、それも“当然”の価値観として存在してしまっていたのだ。差別をする女性も根っからの悪人というわけではなく、自分の差別意識に疑問を持つ、複雑な人物として描かれているというのも美点だろう。

9:『ルース・エドガー』(2020)

 こちらは現在劇場で公開中の映画だ。主人公の少年は模範的な生徒として周りから賞賛を集めていたが、ある課題のレポートをきっかけに、女性教師から危険思想の疑いをかけられてしまう。その後は女性教師のみならず、彼のことを愛していた両親でさえ「少年の真意がわからない」という状況に追い込まれていく。その過程は、完全にホラーと言って差し支えない。  これは「人間をステレオタイプにはめ込む」事から発生する、偏見と差別を痛烈に突きつけた映画でもある。少年に課せられたのは「黒人はこうあるべきだという理想の姿」であり、それは他人には計り知れない重荷になり得る。女性教師もまた苦悩を抱えていたことがわかる、中盤のとあるシーンも強烈な印象を残すことだろう。なお、『ゲット・アウト』(2017)も本作と似た「人によっては思いもしない差別の形」を描いたホラー映画である。

10:『13th -憲法修正第13条-』(2016)

 Netflixで配信されている、合衆国憲法修正第13条(奴隷制廃止条項)にまつわるドキュメンタリー作品だ。初めに提示されるのは、「犯罪者は除く」と書かれた法律の抜け道を利用して、些細な罪で刑務所送りにした大勢の黒人たちを労働力に利用していたという信じがたい事実。奴隷制度が廃止されたとしても、なおも不当な人種差別が巨大な搾取のシステムに組み込まれていたのだ。  その後も、マスメディアによる扇動、間違った政策など、現在に至るまでの数々の人種差別に関わる悪しき体制が、これでもかと明らかとなっていく。人種差別の問題の核は、社会的な構造にこそあるのだと今一度気づかされるだろう。なお、YouTubeでも全編が無料公開されており、設定から日本語字幕もつけることが可能だ。

Netflixではさらなる“Black Lives Matter”の作品群も

 ここでは主に“普通の人”の生活や行動にスポットを当てた作品を紹介してきたが、この他にも人種差別に立ち向かう偉人を描いた映画に『マルコムX』(1992)、『42 世界を変えた男』(2013)、『グローリー 明日への行進』(2015)、『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016)、現在劇場で公開中の『ハリエット』(2019)などもある。これらも合わせて見れば、現在の“Black Live Matter”に至るまでの時代の変遷もよりわかることだろう。  また、Netflixでは「Black Lives Matter:黒人とアメリカ」という作品リストも公開されている。  人種差別および“Black Live Matter”を取り上げた映画が数多く作られているということは、それが今なお解決できていない、現在進行形の問題であることも示している。個々人がこれらの作品に触れ、当事者である黒人たちの心境を考えることは、間違いなく意義のあることだ。 <文/ヒナタカ>
インディーズ映画や4DX上映やマンガの実写映画化作品などを応援している雑食系映画ライター。過去には“シネマズPLUS”で、現在は“ねとらぼ”や“CHINTAI”で映画記事を執筆。“カゲヒナタの映画レビューブログ”も運営中。『君の名は。』や『ハウルの動く城』などの解説記事が検索上位にあることが数少ない自慢。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」 Twitter:@HinatakaJeF
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