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新型コロナウイルスの影響で、株価は激しく乱高下。目まぐるしい値動きに右往左往し、大きなマイナスをくらった個人投資家は少なくない。では、そんな“コロナ相場“で勝ちきった辣腕トレーダーたちは、どのように立ち回ったのか?
買い付け余力を増やし、万全の準備でコロナを打破。損失ゼロを達成!
「ライブドア・ショックやリーマン・ショック、東日本大震災……過去の暴落局面で、幾度となく買い付け余力がなくて大変な経験をした苦い思い出がありましたが、今回はそれをやっと生かすことができました」
胸を撫で下ろしながら語るのは、兼業投資家の雄、弐億貯男氏。同じ過ちを繰り返さないのが達人たる所以だ。
「’19年は消費税増税や東京五輪の投資活動が一巡するなど、’20年以降の景気減速、すなわち
リセッションの材料が多く見受けられる年でした。そのため現金比率を高くしたほうがよさそうだと判断した私は、来る景気後退局面に向け
ポジションを減らして現金化。買い付け余力を7割にまで増やしていたんです」
普段は現金比率を5割程度にキープしているという弐億氏だが、景気後退の可能性を見据え、’17年頃から5割程度だった買い付け余力を増やすことに。’18年は6割、’19年は7割にまで引き上げ、
’20年のコロナ禍においては8割に至っている。
「買いたい銘柄も特になく、『いずれリセッションが起きて市場全体が下がるだろう』という思惑を持っていました。この考えがたまたま当たったこともあり、
“現金化作戦”は結果として大成功でした。保有株を段階的に利益確定していったことで’17~’19年の3年間で約6000万円ほどの儲けが出て、その結果、買い付け余力の確保につながったかんじですね。現金が手元にあるため、『これで景気が落ち込んでも大丈夫だろう』と思っていた矢先に今回のコロナ騒動がきた。正直、コロナがここまでマーケットにダメージを与えるとは思っていなかったですが、不穏な空気を察知して安全策を講じていたことが吉と出ました」
そう謙遜する弐億氏だが、それは「
自分の予測は信じない」という、確固たる信念に基づいた結果だった。
「現状、株価は底這いで成果はまだ出ていません。今後、株価が下がれば買い増しも検討します」と弐億氏。4月下旬には株価が1000円を下回る局面もあったが、思惑通りほぼ大底で購入できている。あとは上振れを待つだけだ
「そもそも僕が懸念していたのは消費増税による景気後退。それが増税直後の10~12月、日経平均株価は予想に反して上がり、高値圏で推移していたこともあって、保有銘柄は堅調でした。それで利確しておこうと思った。そして2月以降、コロナの脅威が日本にも伝播し始めると、念には念を入れてコロナの影響を受けつつある銘柄をさらに売却していったんです。具体的には施設介護銘柄や外食産業銘柄など。ウチヤマコーポレーション、Zホールディングスをここで利益確定しました」
的確すぎる準備が功を奏し、3月に起きた未曽有の大暴落にも狼狽することは一切なかった。
「3月にもなるとさすがにコロナに対する見方も変わっていました。もちろん、僕とて無傷ではいられなかった。ですが、煽りを食らうのは総資産の2~3割だけ。含み益が1000万円近く減る場面もありましたが、キャッシュをたくさん持っているという安心感から保有株を全部投げ売ってしまうという暴挙に出ずに済みました。結果、保有株の株価は多くが全戻しとなり、5G関連のアルテリアネットワークスやキャッシュレスのバリューデザインなどはコロナ前よりも株価が上昇し、資産を増やすことができました。現金保有の大切さを通感した相場でした」