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コロナの感染が広がり始めた段階で中国はネット検閲を開始していた。トロントの
CitizenLabのレポート『
Censored ContagionHow Information on the Coronavirus is Managed on Chinese Social Media』(2020年3月3日、CitizenLab)によると、中国国内の医師が警告を発し始めた2019年12月の段階で、YY(中国のライブストリーミング配信サービス)で検閲が行われたとある。
2020年5日には中国におけるインターネット管理の最高機関であるCAC(Cyberspace Administration of China)が、コロナに関する害のある情報や恐怖を流布するネット上のウェブサイトやサービスあるいはアカウントを処罰すると発表した。
中国でよく使われているメッセンジャーWeChatでも同様の検閲が行われており、2020年2月になると、中国政府への批判や感染症に関する噂や中国政府のコロナ対策に対する中立的な発言も対象となった。
さらに続くレポート『
WeChat Surveillance Explained』(2020年5月7日、CitizenLab)では、検閲の対象が国内だけでなく、国外にも及んでいることが暴露された。
2020年3月には
The Interceptも、中国の動画サービスTikTokの内部のモデレーション用資料を公開している。好ましくない思想的コンテンツの禁止や、アルゴリズムによって魅力的でないコンテンツ、不毛なコンテンツを処罰すると書かれていた。もともとTikTokは中国政府の意向に沿った検閲を行っていることを
The Guardianなどがレポートしており、TikTokは中国政府の意向を受けた検閲を行っているとして、アメリカでは危険視する議員もいる。
同じく5月に
THE DIPLOMATは中国のネット世論操作がアメリカ、アルゼンチン、セルビア、イタリア、台湾で確認されたとし、世界に広がっていることをレポートしている。
この他に、コロナ禍で急速に世界に普及したオンライン会議システムZoomの情報が中国に漏れている可能性も指摘されている。カナダの
CitizenLabがレポートを掲載し、アメリカ下院で証言した。
コロナ禍が広がる中、中国やロシアは検閲だけでなく、自国に都合のよい情報の発信も行っていた。
オクスフォード大学でネット世論操作を研究している
The Computational Propaganda Projectの『
Coronavirus Misinformation: Weekly Briefings』によれば、ロシアと中国政府が支援する情報発信が多数行われており、その
拡散やエンゲージメントはBBCやNew York Timesなどのメディアをしのいでいるとしている。同じくThe Computational Propaganda Projectの『
Coronavirus Coverage by State-Backed English-Language News Sources』では、
中国、イラン、ロシア、トルコの英語版ニュースが数千万の国際的な読者を抱えていることを明らかにした。これらのニュースは一般的なニュース(BBCなど)に比べると記事の数は少ないが、そのエンゲージメント(いいね、などの反応)は10倍以上だった。中での1記事当たりのエンゲージメントでは中国ニュースのCGTNと新華社はBBCの10倍以上とずば抜けていた。
その内容は、コロナ禍に関連して民主主義の不完全さや腐敗の批判、自国のリーダーシップや医療支援の称賛、コロナ発生やWHOの判断についての陰謀論などである。
余談であるが、中国の政府系メディアは
フェイスブックで情報発信しており、下表のようにそのフォロワーの数はきわめて多い。人数はフェイスブックのフォロワー数である。
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人民日報(新聞) 7,200万人 日本語版
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新華社(通信社) 7,000万人 日本語版
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CGTN(放送局) 9,000万人 日本語版
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チャイナデイリー(英字新聞) 8,400万人
we are socialの『
DIGITAL2020』によれば
フェイスブックの「いいね」ランキング20位にランクインしている国営および政党のメディアは、10位の中国のCGTN(国営テレビ局中国中央電視台中国グローバルテレビジョンネットワーク、中国環球電視網)と、13位の中国共産党のChina Dailyのふたつだけだ。上位20位以内には他の国営メディアあるいは政党関連のメディアはランクインしていないのである。