コロナ禍の中で進む中露のネット世論操作。その時、ヨーロッパは!?

自壊する民主主義陣営

 今回はコロナ禍という特殊な状況における中国のヨーロッパに対する影響力の行使について書いた。しかし、これまで何度も書いてきたように、これはコロナ禍だから起きたことではないし、ヨーロッパでだけ起きていることでもない。中国やロシアを中心としたデジタル権威主義国の検閲やネット世論操作は過去も現在も世界各地で行われている。それでもヨーロッパには特別な意味がある。  日本で生まれ育った我々が教わってきた民主主義的な価値観をいまでも守っている国のほとんどがヨーロッパにあるからだ。ヨーロッパの民主主義が瓦解すればこれまでの民主主義的価値観は世界から消え去る可能性が高い。  民主主義は現在の社会のあり方に適合していない。だから衰退する。コロナによって衰退は加速された。その一方で中国を代表とするデジタル権威主義は適合しているから勢力を拡大する。民主主義的価値観は今の社会に適合する統治形態に移行しなければ生き残れないだろう。民主主義を守れ、というかけ声を近年よく聞くが、過去と同じ民主主義を復活させることは不可能だろう。新しいあり方を提示しなければデジタル権威主義国に膝を屈するしかなくなる。  今回のコロナ禍での各国の対応と混乱は現在の民主主義の混乱をそのまま反映しているように見える。 <文/一田和樹>
いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている
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