トラックドライバーの知られざる車内生活。調理器具を持ち込み自炊する人も多数

中には電子レンジやフライパンで自炊をする人も!

 長距離トラックの車内にある程度の食料があることは、誰しも想像が付きやすいところだろうが、彼らが備蓄する食料の種類や量は、おそらくその想像をはるかに超えている。  彼らは、非常事態などによって突然クルマに閉じ込められた時のために、数日~2週間、中には1か月ほどの食料を備蓄している人も多い。とりわけ雪国や、荒天候を走ったりするドライバーは非常食に対して敏感になる。  驚くべきは、その種類だ。インスタントラーメンはもちろん、缶詰、パスタ、パスタ、餅やコメまである。  実はトラックドライバーの中には、車内で自炊をする人が多くおり、ドライバーの間では、こうして自炊した食事を「トラック飯」と呼んだりしている。  パスタやコメがあるということは、もちろん調理器具もあるということ。ポットや冷蔵庫はもちろん、鍋、フライパン、カセットコンロ、炊飯器、さらには電子レンジまで備え付けるツワモノまでいるのだ。

全国を回るからといってご当地グルメにありつけるわけではない

 彼らが自炊をする理由は主に3つある。1つは、自炊のほうが安上がりであること。外食の多いトラックドライバーは、食費が10万円近くにもなる場合もある中、自炊をすることで3万円程度に抑えられる。  また、「外食に飽きる」というのも自炊の理由の1つ。トラックは日本各地を走り回るため、行く先々でご当地グルメを食べ歩けるというイメージがあるかもしれないが、実際は車体の大きいトラックが入れる店も、店探しをしている時間もそう多くないため、どうしてもコンビニ弁当などに頼りがちになるのだ。  そして残る1つは、「感染防止対策」だ。  今回のコロナ禍では、各地を回るトラックドライバーは「感染高リスク者」とされ、職業差別の対象になったこともあったが、実際のところは、彼らは基本1人で作業することがほとんどであるため、感染リスクはむしろ低い。さらには、こうしてできるだけ車内から出ないようにしたり、中には、会社がドライバーに車内用炊飯器を支給するなどして、感染リスクを減らす工夫をしているのである。 <取材・文・写真/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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