IBMの顔認識事業撤退宣言に見る、「ポストコロナ」社会に広がるディストピアへの危機

アフターコロナで進む、人間トラッキングの問題

 アメリカが、立ち止まったからといって顔認識の技術が停滞することはない。中国は積極的に技術開発と世界への普及を進めていくだろう。国民を監視したい独裁国や、そうした傾向のある国には、常にこうした技術の需要がある。  また、国民監視といった目的以外にも、この手の技術は需要がある。新型コロナウイルスの流行以降、濃厚接触者を特定するために、個人追跡の技術には大きな需要が生まれた。個人がどこにいるのか、誰と一緒にいたのかという情報は、感染予防にも役立つ。  集団の利益のために、個人の自由や権利を制限するという考えは、以前は受け入れ難いものだった。しかしコロナ禍以降、求められる行動様式は大きく変わり、国民の監視技術は人々に受け入れられやすくなった。今回のアメリカの事情とは反対に、顔認識技術は大きく普及する可能性が高い。  コロナ禍での人間トラッキングは、まだ非日常の特殊例だ。しかし、アフターコロナでも継続して日常になれば、人々は疑いもなく受け入れていくだろう。こうした監視技術の進展は、今後様々な社会問題を生んでいくのではないかと感じさせられる。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。
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