岐阜を中心とした中部地区でR・Tさんは11年にわたり私服保安員として従事している
みなさん、こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日は、「清水建二の微表情学第84回~第86回」にて取材協力して頂いた私服保安員の方に再度協力して頂き、実務における表情分析の現在を伺いました。
本取材に協力頂いた私服保安員の方の具体的な業務は、万引き犯を取り締まることです。テレビの特集などでは、通称万引きGメンと呼ばれています。保安員歴11年の R・Tさん(30代・男性)。最近、表情分析の専門資格であるFACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)を取得されたと伺い、取材させて頂きました。
Rさんは、「外見からやはり判断されてしまうんですね。」としみじみ言いながら、こんな話をしてくれました。
某書店にて、黒髪で清楚な感じの女性がコミックを2,3冊万引きしているのを発見。女性が店外に出たところで声をかけ、書店の事務所に任意同行。30代前半のOLのようです。彼女の手荷物は、バックとレジ袋。任意で持ち物検査をしたところ、案の定バックの中からコミックが現れ、彼女は素直に犯行を自供。それを見て、店側は警察に通報したとのことです。
しかし、Rさんは持ち物検査のときにある違和感を抱いたようです。
「持ち物検査のときに、バックの中に缶詰と刺身が袋に入った状態で入っているのに気が付きました。違う店舗で万引きしたものじゃないかと思って。変ですよね。レジ袋じゃなくて、バックの中にパッケージの状態なんて。そこで、警察官に確認をお願いしました。」とRさん。
警察官が、再度持ち物検査をし、前科が無いことを確認。そして、OLに尋ねます。
警察官:この袋のもの(レジ袋の中のものとバックの中の缶詰と刺身を指して)、お金払っていますか?
OL:(レジ袋の中のものを指して)お金払いました。(バックの中のものを指して)お会計しています。
警察官:そうですか。わかりました。
警察官はOLの言葉を信じ、Rさんに伝えます。しかし、Rさんは彼女の言葉と表情とに矛盾を抱いたそうです。
「彼女は『お会計しています』と言いながら、口元を手で覆い、眉は引き上げられながら眉間に力が入り、目は見開いていたのです。これは恐怖の表情です。お会計しているなら、なぜ恐怖を抱かなくてはいけないのでしょうか。レジ袋のときは、表情に何も変化はありませんでした。バックの中のときだけ、恐怖の表情なのです。」
Rさんは、OLには聞こえないところで、警察官にもう一度バックの中のことを聞いてもらおうとお願いします。しかし、警察官は消極的です。
Rさん:僕は、バックの中の商品を買っていないと思うので、もう一度本人に聞いてもらっていいですか。
警察官:いやいや、本人『買っている』って言っていますし、何の証拠もないですよ。
Rさん:じゃあ、僕が自分で話します。
と言い、RさんはOLに話しかけます。
Rさん:僕は、バックの中のものを清算していないと思うんですけど、本当に買っていますか?
OL:あ、いえ、買いました。
ここで、OLの表情の反応が先と同じことから、バックの中のものも万引きしていると確信しました。