万引き犯の微表情を読み取り、反省の弁を引き出した万引きGメン

心から反省してもらうために出来ること

警察官:本人「買った」と言っていますよ。なぜそんなに「買っていない」というのですか? Rさん:もし買っているのならば、何をそんなに恐れているのですか?買ってないから、恐れているんじゃないですか? OL:……。 Rさん:もしこれが盗ったものであったとしても、すぐに逮捕ということになるわけではないので、あなたのためにもここで本当のことを話した方がよいのではないでしょうか。  Rさんは、こう女性に話しかけた理由を次のように説明してくれました。 「ウソを重ねて最終的に発覚すれば、警察からの心証が悪くなり、悪質で逮捕に至る可能性もあります。また、ウソをつかせたままで終わらせたら、彼女は心から反省できないと思ったのです。このときの彼女の表情は、口角が引き下げられ、下唇は引き上げられていました。つまり、感情を抑制している表情です。そこで、こんなふうに彼女に問いかけました」 Rさん:私は逮捕とかを望んでいるのではなく、もし盗っているのであれば、しっかり謝って代金を支払って欲しいだけなのです。 しばしの沈黙後。 OL:……お金払っていません。 警察官:あなたさっき「買った」と言ったじゃないですか。私にウソをついたのか。 OL:すみません。  その後、彼女と彼女が食品を万引きした店に行き、謝罪してもらい、万引きした商品の代金を払ってもらったそうです。それから彼女は警察署に行くことになりましたが、逮捕ということにはならなかったとのことです。

鋭い観察眼と優しい心で万引き犯を日々説諭するRさん

 レジ袋の中身とバックの中身との表情反応を比べ、疑惑度を推定する、凄いスキルです。また、R・Tさんは、そのとき書店に雇われていた保安員ですので、書籍の万引きを取り締まることだけが業務範囲です。しかし、万引きを犯してしまったOLの更生を願い、積極的な行動をされている姿勢に敬服します。  ところで、冒頭の「外見からやはり判断されてしまう」というRさんの言葉は、どういう意味でしょうか。黒髪で清楚な感じの女性ゆえに、警察官はコミック以外の万引きについては疑わなかった、という意味でしょうか。このケースに続き、見た目が「ザ・ギャル」の万引き犯のお話を聞かせて頂きました。外見が引き起こす対応の違いとは?次回、清水建二の微表情学にてお送りします。ご期待下さい。 ※本取材は、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令される前の3月に行ったものです。 ※本記事中の画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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