毎年0.4%の炭素を耕作地の土壌に加えることが、地球温暖化の解決につながる!?

地下湖に莫大な量のCO2が蓄積されている!?

 でもどうしたら土壌に炭素を戻せるんだろうか。ここでたいへん面白い事例を見つけた。中国の新疆ウイグル自治区。石油や天然ガスが取れて資源が豊かなために、今や世界中から、そして中国政府からもホットな扱いを受けている地域だ。  知られていないが、そこにアメリカの五大湖の10倍もの地下水を蓄えている地下湖がある。その地下湖に約1兆トンもの莫大なCO2が蓄積されているようだという記事だった。それまで吸収源を特定できないCO2はミッシングシンク (missing sink) と呼ばれ、その行き先は未解明のままとなっていた。  その記事とは、「『消えたCO2』の謎が解明か/砂漠の地下の帯水層が大量のCO2を貯蔵、農業による灌漑が加速」という論文の紹介記事だ。「ワイリーサイエンスカフェ」というところに紹介されている。 「植物の根や地中の微生物から土壌中に排出されたCO2は、乾いた砂漠なら大部分が大気中に放出されますが、この地域の農地では、農家が塩害対策として大量に使用する灌漑用水とともに地下深くに送り込まれ、…地下水を蓄える帯水層…に約200億トンのCO2が蓄積されたのではないか」  要は植物の根から土壌中に排出される液体化した炭素が、地下水に隠れ混んでいたというのだ。確かに植物は土壌の微生物と共生していて、微生物に栄養を届ける代わり、ミネラルや水分等を届けてもらうことが知られている。  植物は自分が必要とする炭素分だけでなく、菌根圏にいる微生物たちのための分も炭素を固定しているのだ。それがここでは塩害対策として大量に使用する灌漑用水とともに地下深くに送り込まれたというのだ。

人間が放出しているCO2の45%を減らせばいい

温暖化イメージ この場合はたまたま地下湖に蓄えられたが、もしそこに微生物がたくさん住んでいたとしたら、それは地中の有機分として土に蓄えられていただろう。  一つは植物と微生物の共生の中に、炭素を含ませることができる。自然の摂理に沿って行われる農業は、土に炭素を蓄積させる優れた方法だ。  それは土に炭素を届けていく方法の一つだ。しかし今の地球温暖化で相手にしなければならない量は桁違いだ。どれほどの量なのか、ここでIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2013年データにもとづいて示してみよう。 CO2の残留 単位がどでかい「億トンの炭素」だが、人間が放出しているのが89億トンで、陸上と海域に吸収されているのが49億トン、地球を暖めてしまう温室効果ガスとしてのCO2が40億トンだ。つまり減らすべき量としては89億トンのうちの40億トンになる。  これはつまり、45%を減らせば良いことになる。  次にいよいよ地球温暖化問題に入っていきたいのだが、「CO2の問題は陰謀だ」というような懐疑論を否定しなければならない。ここでは簡単に実力の差を問うことにしよう。 「地球を温暖化させているのは○○だ」といったようにCO2以外の原因を唱える人が多いが、「地球温暖化は起こっていない」とする人はさすがに少なくなった。その原因をCO2以外に求める説が多いように思う。  しかし地球は熱源である太陽からの距離のせいで、地表の平均温度はマイナス18℃の氷の惑星のはずだった。ところが今の地表の平均温度がプラス15℃であるのは主にCO2の温室効果のおかげだ。  その差を33℃も温めたCO2の温室効果は抜群だ。これほどの「横綱級」の存在と比べて、他の「温暖化の要因」が温める効果とはどれほどのものだろうか。  もうこの時点で温暖化の現実を認めるのなら、「勝負あった」と言えるだろう。
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「ライフスタイルを変えれば解決する」という誤解
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