リモートワークやオンライン授業で脳が退化する? 「人間らしさ」を回復させる意外なツール

オンライン授業と子どもの成長

 川島氏は、発達期の子どもが脳を使う機会が減ることで、脳が健全に発達しなくなるのではないかと懸念している。これは大人だけの問題ではなく、子どもにとっても影響は大きい。世間ではYouTubeでの授業配信オンライン授業が少しずつ導入されている。しかし、短期的には便利でも、将来のことまで長期的に見ると、本当に子どもの成長のためになっているのだろうか。  また、対面コミュニケーションが少ない状態が続いてしまうと、子どもだけでなく、大人もエゴが強くなったり、計画性がなくなるなどの影響が出てしまうかもしれない。    これは感覚的な話になるが、私もドキュメンタリー映画やYouTubeで知識を得ようとしているときは、目で情報を認識しているが、脳で情報を処理していない違和感があった。今回の記事を書くことになったきっかけも、このような違和感の正体を探るためだった。どうやら、この感覚は正しかったようだ。

読書が脳を回復させる

 とはいえ、「発達した便利なテクノロジーを使うな!」と言いたいわけではない。コロナの影響で、人との接触を最小限にする必要があるなかで、対面コミュニケーションを推奨することはできない。  川島氏の著書では、「読書」があなたの遅れた脳発達をリカバリーする効果があると言及している。氏の研究では、読書する時間が長いほど、言語処理能力や、視覚性認知力などの脳の発達にいいことがわかっている。  理想は、対面コミュニケーションをすることがいいが、もし自分の子どもや、自分自身がPCやスマホ画面を通したコミュニケーションが多く、読書時間が少ない場合は、一か月に2冊程度(平均的な日本人の読書量) の本を読むことをオススメする。    「便利」ということは、脳や身体へのストレスが軽減されるということだ。人は適度なストレスがないと成長することができない。便利になった喜びだけに注目してしまい、便利と引き換えに軽減されたストレスが、どのような影響を与えるか考えることが少ない。  便利な最新のテクノロジーによる恩恵と、それによる悪影響を考慮しながら、人生を豊かにしていきたい。   【参考資料】 『スマホが学力を破壊する』川島隆太 『前頭葉損傷による高次脳機能障害のみかた』前島伸一郎ほか 『前頭葉機能障害の認知リハビリテーション』柴崎光世 <文/山本マサヤ>
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
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