「自粛自警団」より怖い「本物の自粛警察」の本性と内包する問題

デモ規制も「お願い」

幸福の科学「東京正心館前」での抗議活動

幸福の科学「東京正心館前」での抗議活動(黄色いスカーフとカメラをかざしているスーツ姿が教団職員たち)

 私自身、デモなどを何度か主催したことがある。週刊文春の報道に抗議する統一教会信者たちの眼前での「暴飲暴食デモ」(2011年)や、全屠殺場の閉鎖を求める「アニマルライツ」のデモを歩道から追尾し肉を食べまくる「動物はおかずだデモ」(2019年)。また、幸福の科学が香港民主活動家アグネス・チョウ氏についてデマを流したことに抗議して、高輪にある幸福の科学の「東京正心館」前の歩道で3度、抗議活動を行った(2019年)。また今年3月には、国会前での「リモートデモ」(私1人が国会前に立ち、首からぶら下げたタブレットから、Zoomによるデモ参加者たちの映像と音声を流すというもの)も行った。  いずれも歩道での抗議活動だ。デモの告知やリポートをネットに掲載すると、よく「デモの届け出」とか「道路使用許可」が云々といった、知ったかぶりコメントが寄せられる。幸福の科学前でのデモでは、教団職員らが私達に向けて「無許可デモは違法」などというプラカードを掲げた。  しかし歩道での抗議活動については、事前に警察に届けを出そうとしても「届け出は不要」と言われ、受け付けてもらえない。届け出は不要なのだから、無届けで実行して問題ない。にもかかわらず、現場では警察官からも「示威活動(届け出が必要なデモ行為等)に当たる」などと「注意」を受ける。  「リモートデモ」の際は車道の使用を申請しようとしたが、国会前を歩くのが私1人であるため、警察からはこういった趣旨のことを言われた。 「都条例が定める集団行動及び集団示威行動に当たらないため車道の利用は許可できない。歩道でやって下さい。歩道については届け出の必要はいない」  それでもなお、現場では抗議の声をあげる場所を指定され、それ以外の場所でのシュプレヒコール等を禁じられた。法的根拠はない。「お願い」だ。歩道でやれと言ったのは警察の方なのに。  私は主催者ではないが、今年、「コロナ片手に散歩する会」が国会周辺の歩道を歩きながら「自粛させるならカネよこせ」と抗議したことがある。私も参加した。  このときも警察官につきまとわれ、指定の場所以外ではプラカードすら隠せと言われて行く手を阻まれた。プラカードを掲げると「無届けデモ」になるという。それを理由に、歩道の往来すら自由にさせない。
コロナ片手に散歩する会

自民党前で抗議の声をあげる「コロナ片手に散歩する会」

 主催者は「集団」でなければいいのだろうとばかりに、「解散!」「ソーシャル・ディスタンス展開!」などと宣言。次の抗議ポイントまで移動する間は、参加者たちが1~数メートルの間隔を空けて「集団ではなく個人」としてプラカードを掲げるなどした。抗議ポイントに着くたびに「集合!」の声がかかり、再び「集団」に戻る。それでも警察は、プラカードを掲げる行為を執拗に制止した。  抗議活動をする側の目的は警察と揉めることではなく、政府なり何なりへの抗議活動である。本来の目的を果たすには、警察と妥協してでも抗議活動そのものを円滑に行うことを目指す以外にない。私自身も「コロナ片手に散歩する会」も、やむを得ない妥協を強いられた。  今に始まったことではない。東京だけの話でもない。おそらく、これまでデモを開催してきた様々な団体や個人たちも、同じような場面を嫌というほど目にしてきているだろう。基地問題をめぐるデモ等が繰り返されている沖縄では、なおひどいのではないかと思う。2016年には取材中の沖縄タイムスの記者が市民とともに警察から拘束される事件も起きている。  日本では、「デモや集会の自由」も「報道の自由」も絵に描いた餅にすぎないと思える場面が多々ある。  抵抗すれば、どうぜ「公務執行妨害」との口実で逮捕されるのだろうが、そもそも法的根拠のない警察の行動は「公務」なのか

コロナで勢いづく「本物の自粛警察」

 新型コロナウイルスへの対策として、政府や自治体が店舗の営業等に対して自粛を呼びかけた。中でもライブハウスや「バーやナイトクラブ」がやたらと槍玉に挙げられ、「夜の街」がターゲットにされた。  4月9日には「カナコロ 神奈川新聞」が【新型コロナ】外出自粛徹底へ、県が県警に協力依頼 警察官「声掛け」と題する記事を配信している。これによると、黒岩祐治知事・神奈川県知事が県警に対し、夜の繁華街などでの市民への声かけなどを要請したという。  同じく4月9日に「毎日新聞」が、千葉市長、ナイトクラブ取り締まり強化要請も…県警「権限ない」 新型コロナと題する記事を配信。熊谷俊人・千葉市長が「夜のクラスター発生を防止するべく、県警に対してナイトクラブ等への一斉立ち入りなどの取り締まり強化を要請しています」と発言したと報じた。さすがにこれは、県警が「風営法上の権限に基づいて立ち入りをすることはあるが、法的権限を有さない事案ですることはない」(同記事より)と応じている。  4月12日に「朝日新聞」が配信した警官声かけ「外出自粛に協力を」 職務質問との線引きもには、抜身の警棒片手に歌舞伎町を見回り通行人に「声かけ」をする警官の写真が掲載されている。  緊急事態宣言が解除されたものの再び感染者が増加の兆しを見せている東京都では6月2日に小池百合子知事が「東京アラート」を発し都庁とレインボーブリッジを赤くライトアップした。同日、「日テレNEWS24」などが夜の歓楽街「見回り隊」結成を検討 東京都と報じた。警視庁と協力して見回りを行うという。小池知事は都庁とレインボーブリッジのライトアップで見物目的の人々の外出意欲を高めておきながら、一方では繁華街に再び警官を動員して市民を威圧させるつもりのようだ。  警官が警棒片手に朝夕の通勤電車で乗客を威圧して回ったというニュースを目にした記憶はないのだが、「夜の街」には自治体が「本物の自粛警察」を投入している。極めて恣意的な暴力装置の活用だ。  新型コロナ対策をめぐっては、至るところで「自粛の要請」「自粛のお願い」という崩壊した日本語が横行している。法律上の強制力を持たない中での苦肉の策であり、こうした対策を不要とまでは言わない。  しかしコロナ対策として必要なのであれば、法律を整備し、基準と歯止めをしっかり設定した上で強制力を用いるべきだ。現状は、恣意的に選んだ対象に対して、法的根拠なく事実上の強制力を用いたり暴力と強制力を背景に威圧したりすることで「自粛させる」(これも日本語として崩壊しているが)という警察の本領に、自治体が苦し紛れに頼ろうとしているにすぎない。  安倍政権の諸々の問題にも絡むものであり、差別問題でもあり、新型コロナ対策の問題でもあるそれぞれの事例は、同時に、安倍政権以前からの日本の警察のありようの問題だ。 <取材・文・撮影/藤倉善郎>
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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