「正義感の暴走」という言葉への違和感。そこには微塵も正義などない

事態を悪化させるさまざまなバイアス

 そして、人間は一度、どちらかの味方についた瞬間から、その人を過剰に擁護するようになってしまう心理的バイアスを持っている。それが、「内集団バイアス」だ。  「内集団バイアス」とは、同情できる人に対してや、同じ価値観を持つ集団、同じチームを応援する人、家族、職場仲間など同じ集団に属する人に対して好意的になったり、優遇するようになるものだ。  例えば、応援しているチームが試合中に微妙なルール違反をしても無視できるが、対戦相手にはルール違反に対して過剰に厳しくなる。  さらに、片方に味方したあとに、自分の行動が間違っていたとしても、「確証バイアス」という自分に都合の悪い情報を無視するようなバイアスも働く。  番組を批判するツイートも多く見られるが、そのコメントしている人のなかにも、木村花さんにアンチコメントをした人が一定数いて、自分の行動による影響は無視して「アンチが出るように番組を作った番組側が悪いんだ」と、責任逃れをしている人もいるだろう。

自分の感情にも疑念を向けよう

 人は誰かの味方になった瞬間から、公平に物事を判断することができなくなる。「正義の鉄槌」を振るっている瞬間は、正義感に酔いしれて快感を感じているかもしれないし、その快感が更なる行動を刺激して、後戻りできないところまで行ってしまうかもしれない。どんなときも、自分の信じている正義が間違っている可能性を忘れず、正義感に依存しないように心がけたい。  謹んで木村花さんのご冥福をお祈りいたします。 <文/山本マサヤ>
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会