飲み会そのものにも難しい点は多々確認できたが、オンラインの場合「飲み会を終わらせるタイミング」が非常に難しいということも指摘された。
リアル飲み会の場合、大半は居酒屋に入り、飲んで食べて親睦を深めることになる。その場合、筆者の経験では夕方から夜という店にとってのピークタイムに差し掛かっていることから、店の利用時間に制限があるという場合も多かった。もちろん、まだ会を続けたいときは、二次会に流れることも多々あった。
時間制限で退店しなければならないというのは、一見するとデメリットのように思えるが、結果としてこれが飲み会から帰宅するベストなタイミングとしても機能していた。そもそも一次会でお開きというパターンもあるうえ、仮に二次会が開催されても不参加を申し出やすいからだ。
加えて、リアル飲み会には「門限」や「終電」といった問題もある。家庭の事情で門限が設定されている場合や、終電の時間が近い場合も、帰宅を申し出る十分な理由になる。しかしながら、オンライン飲み会の場合は当然ながら在宅のため、飲み会を退場するためにそうした理由を使うことはできない。
そのため、筆者の経験ではオンライン飲み会が際限なくダラダラと続いてしまうことが多いと感じる。もちろん自分にとって不満の残る飲み会ならキッパリと退場してしまうのも手だが、仲間内で実施するような場合もあらかじめ終了時間の目安は決めておくべきかもしれない。そうすればメリハリのある飲み会になり、飲みすぎの防止にもつながるからだ。
「オンライン飲み会は仲間内でやるべきだが、今は仲を深める手段がない」ジレンマ
ここまでオンライン飲み会の難しさを論じてきて分かったことがある。
それは、「オンライン飲み会とは、すでに気心が知れた仲間同士で開催するべき」ということだ。実際、上で挙げた欠点の多くは仲間内であればそれほど問題にならないもので、オンライン飲み会の利点である外出の必要性がなく、費用が安いという点を存分に生かすことができる。
一方、私たちが普段の飲み会で実感する「それほど親しくない人と、お酒の力を借りて仲を深める」という機能は、オンライン飲み会だとほとんど発揮されないというべきだろう。
しかし、就職や転勤などで4月を期に新たなコミュニティに所属することになった人たちにとって、オンライン飲み会を楽しむ前提となる「仲を深める」手段が極めて乏しいのも実情だ。
リアルの飲み会ができないのは言うまでもなく、各種イベントやアクティビティもなければ、職場でとりとめのない雑談を交わすことさえ困難。これでは、そもそもオンライン飲み会を楽しむための準備ができないに等しい。
ただ、一応誤解のないように断っておくと、筆者は居酒屋の回し者でも、いわゆる「飲みにケーション」の信者でもない。むしろこれまではリアル飲み会の意義にも懐疑的で、「親しくない人との親睦を目的とした飲み会」には拒否感のほうが強かった。
それでも、実際にリアル飲み会という手段を封じられてみると、これまで果たしていたコミュニケーション上の役割を再認識せざるを得ない。
昨今はアルハラの問題もたびたび指摘され、若年層を中心に飲み会への熱が低下していることは否定できない。もちろん体質的にアルコールを受け付けない人や、飲み会の雰囲気が苦手な人もいることは承知している。しかし、そうでない人にとって確かにリアル飲み会は有用なコミュニケーションツールとしての側面があることも事実だ。
そう考えると、やはりオンライン飲み会はリアル飲み会の代わりにはならないのではないだろうか。
とはいえ、この期間にオンライン飲み会の利点を知り、自粛要請の解除後も積極的に開催したいと考える人もいるかもしれない。これは筆者の意見だが、オンライン飲み会はリアル飲み会の代わりとしてではなく、飲み会を開催するうえでの選択肢の一つとして今後も社会に定着すると考えている。
<文/齊藤颯人>