なぜ福島原発事故の原因は「地震」ではなく「津波」とされたのか?

チェルノブイリ原発事故の時から隠されていた“不都合な事実”

不透明な日本の行く先イメージ そのことが隠されたのは、再稼働を進めたい側にとって都合が悪かったからだ。そのために、木村さんはまるで“トンデモ論者”であるかのようなレッテルを貼られ、信用を失わされてしまった。  すでに見たように、日本の地震に勝てる建築物などあり得ない。しかも、日本の中に「地震が起こらない地点」を見つけようもない。地震に勝てる原発などあり得ないのだ。  福島原発事故を招いた「細かい配管の破損」は、おそらく「流量計測システムの測定用細管」と見られている。地震当時、発電を停止していた4号炉でも地震で破断していて、1号炉、2号炉とも冷却能力を失っているのだ。  その「流量計測の測定用細管」の耐震性のレベルは、なぜか「三段階のうちの一番弱いレベル」で足りるとされていた。これは明らかに設計上のミスだろう。しかも気づいたとしても、その管を安全側に補強することは困難だ。  このご都合主義が続いていることが、次の事故を引き起こす要因になる。しかし「地震と原発」という観点で見ると、チェルノブイリ原発事故の時点ですら、すでに“不都合な事実”が隠されていた。  チェルノブイリ原発事故は、一般的に運転員の操作ミスが原因とされている。しかし、事故が起きる数分前に、原発直下で震度4程度の地震があったことが確認されている。そのことが、「チェルノブイリ原発 隠されていた事実」というデンマーク国営放送が作ったビデオ(YouTubeで視聴可能)では示されている。  しかし本当のことが知られると、世界中で原発が建てられなくなる。そして、すでにあるものも廃炉を余儀なくされる。それは一部原子力業界の人たちにとっては不都合だった。だから隠されたのだ。  それと同様の問題が「東北地方太平洋沖地震」による福島第一原発事故にも隠されていた。原発は地震に弱いのだ。しかも世界の地震の2割が起こる日本で、このような有様なのである。

「地震が多発する国では無理だ」とロイズ社に原発の保険を断られる

 日本の中で地震が起こらない場所など考えられない。入り組んだプレートの周囲はもちろん、他の場所にも「活断層」が無数に隠されているのだ。その原発はわずかな地震でも、細管が破損して冷却水を失って「メルトダウン」を起こしかねない。  実は日本で原発を始めた時、「何にでも保険が掛けられる」と言われるイギリスのロイズに保険を掛けようと相談して、「日本のように地震が多発する国では無理だ」と断られている。  当然の結論だろう。そご日本側は保険賠償額を小さくした上で、日本の保険会社にグループを作らせ、それで何とか原発を保険に入れさせた経緯がある。その額が少ないため、福島原発事故に対する賠償金が十分ではないことも知っての通りだ。  その結果、原子力発電は終わろうとしている。いくら海外に輸出しようとしても、国内の原発を再稼働しようとしても、終わりの見えた原子力産業の時代は覆いようがない。一刻も早く原発事故の原因を明らかにして、地震地帯である日本の原子力発電所を廃炉にしていかなければならない。  それでも、核のゴミである使用済み核燃料の解決にはなっていない。そこから抜け出るためには、まず一番危険な稼働中の原発を止めるところから始めていかなければならない。  先は長いのだ。ここまで長引かせた原子力をなくしていくための活動の第一歩として、再稼働を拒否し、止めていかなければならない。 新連載・【「第三の道」はあるか 第1回】 <文/田中 優>
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『放射能下の日本で暮らすには? 食の安全対策から、がれき処理問題まで』(筑摩書房)『地宝論 地球を救う地域の知恵』(子どもの未来社)など多数
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