時事通信社
検察庁法改正案の先送りが決まった。検察幹部の人事に政権が介入できるようになるため
「安倍官邸の検察支配法案」と批判が高まり、ツイッターでの抗議が500万件を超えた。国民の巨大な反発のうねりが安倍政権の強引な動きを止めた。5月18日のことだ。
その翌日、2日後に発売される『週刊文春』の原稿を急いでいた私のもとに、ある女性からツイッターのダイレクトメッセージが届いた。
「こちらもぜひなんとか」
そこにはある人物のツイートが貼り付けてあった。玉城デニーさん。おっと、沖縄県知事だ。ツイッターには好きなものとして「沖縄、バンド、読書、釣り、映画、自然、動物、麦酒、泡盛、家族」と掲げている。ほぼ私と重なる。
そんな
デニーさんのツイートはこうだった。
「世論の強い批判を受けて政府は検察庁法改正案を撤回。総理は『国民の理解なしに進められない』とコメントされたとも。2兆5000億円の予算、護岸崩落の恐れがある軟弱地盤、多くの希少種が生息し環境省が重要海域に指定する『辺野古新基地建設埋めたて工事』も国民・県民の理解は得られない。撤回を」
デニーさんは一昨年9月、翁長(おなが)前知事の死去に伴う沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画の阻止を掲げた。その結果、安倍政権が支援する候補らを過去最多得票で破って初当選した。沖縄ではこれまでに様々な選挙で繰り返し「辺野古新基地反対」の候補が勝っている。民意はとっくに示されているのである。
私はかつて、デニーさんの記事を一度だけ書いたことがある。去年9月のこと。デニーさんは沖縄の声を全国に届けようと各地でトークキャラバンを行っていた。その3回目の会場として、沖縄からの移住者が多く“リトル沖縄”と呼ばれる大阪の大正区を訪れた。その時のことをYahoo!ニュースで記事にした。
【デニー沖縄県知事が大阪の“リトル沖縄”で訴えた「基地問題を自分ごとに」と、歌ったスタンド・バイ・ミー】
この記事のタイトルにある「基地問題を自分ごとに」というのは、この時のトークキャラバンでデニーさんが語った言葉だ。以下、デニーさんの発言を紹介したい。
「
ぜひ全国の皆さんに、自分ごととして考えてほしい。そう思って東京、名古屋と開催してきました」
「自分ごとと考えてほしい」というのは、もちろん基地問題についてだ。沖縄には全国の米軍基地の70%が集中する。
「よく(沖縄の)居酒屋で呑みながら言われるんですよ。
『デニーさん、もう沖縄はね、70倍の交付金もらった方がいいよ』って(笑)。そういうふうに言いたくなる気持ちもあると思います。ですが私たちはこれ以上、
未来の子どもたちに米軍基地の不安を感じさせない。未来の世代を将来の事件事故の被害者にさせたくない、ということを念頭に、米軍基地の整理縮小、県外移転を求めていきます」
「私は知事選挙で辺野古の新基地反対を掲げて当選しました。そしてこの2月(2019年)、県民投票が行われ、
72%の人が辺野古の埋め立てに反対という意思を明確に示されました」
「しかし、なぜ工事は続けられているのか? という素朴な不条理に対する疑問を、私たちは解明していかなくてはなりません。そのためにこうやって皆さんに直接沖縄の現状をお話しし、皆さんが同じ国民として、
なぜ沖縄でいつまでもこれだけの基地を、ということを、自分ごととしてとらえていただきたい。そして自分たちに何ができるか、それぞれができることを、ぜひ沖縄県と協力してやっていただきたい。そのことをお願い申し上げるために各地でお話しをしています」
最後の質疑応答で、子どもから率直な質問が寄せられた。
「僕は学校で沖縄について学んでいます。一つ質問なんですが、沖縄の基地を無くすために僕にできることはなんですか?」
デニー知事の答えは……。
「
自分で考え、自分で判断し、自分で行動すること。君にできることは、君がこの方がいいと思っていることのために何ができるかを、ご両親や友達とも話をしながら、少しずつでもいいから実行に移していくことだと思います。頑張ってください。
夢は必ずかないます。頑張ろう!」