批判された立憲・福山哲郎議員の尾身茂副座長への質疑はどんなものだったのか? 全文起こして検証してみた

「前半」の検証

 その質疑は以下の通り。 20200511fukuomiqa1福山哲郎議員:「じゃあ、尾身先生、(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないんですよね?」 *ここで、答弁に向かう尾身氏に対して、安倍総理が後ろから「数字じゃないんだよ」と不規則発言 福山哲郎議員:「(安倍総理に対して)なに指導してんですか? なに、答弁に・・。」 *蓮舫議員を始めとする野党理事が金子委員長に抗議し、質疑が20秒ほど中断する 尾身副座長:「あのー、大切なポイントをあのー、指摘していると思います。それで、実は、あの、これ、あまり、あのー、皆さんもまだ、にんし・・、あの、理解を得られてないかもしれませんけども、実は今日、東京都の、あ、ありましたね、東京都の実は陽性率の分母分子というのは、少し今まで不完全だったんですけど、今回初めてしっかりした分母が出てきて、分子である程度、あのー、まあ、正確なものであって、まあ、これで7%とかということで、で、実は私ども、えっとー、専門家委員会の5月4日に赤信号)」 福山哲郎議員:「私が言ってることに聞いて・・、答えてください。」 尾身副座長:「いや、それは、わかりました。 それでですね、ぜひですね、あのー、これは皆さんに理解して、赤信号)」 福山哲郎議員:「時間ないです。尾身副座長:「わかりました。 で、実は、そういう不完全な中でも、検体がどんどん検体数が上がっている中で、今陽性率が例えば東京では、例えば7%ということで、赤信号)」  いったん、ここまでの前半の質疑について、内容を検証したい。  まず、福山議員の発言を見てみよう。福山議員は、尾身副座長が答弁を始める直前、「なに指導してんですか?」と声を荒げて抗議している。だが、これは答弁に向かう尾身副座長に後ろから指示を出す安倍晋三総理に対する抗議である。一方で、尾身副座長が答弁を始めた後も「答えてください」「時間ないです」等の急かすような口調で度々抗議していることもあわせて確認できる。これらの事実は冒頭に紹介したノーカット映像で確認できる。  確かに、安倍総理の「後ろからの指示」に対しての抗議であればともかく、国会議員や大臣でもない尾身氏に対し、急かすような口調が無礼であるのは間違いなく、たとえ過去に自民党議員が参考人に無礼な野次を飛ばしたことがあったが、それほどまでではないにしても同様に批判されても不思議はないだろう。  一方、尾身副座長がこの前半で述べている答弁内容について見てみよう。福山議員の質問にきちんと答えているであろうか? 繰り返すが、福山議員の質問は5月4日の専門家会議の会見における尾身氏の「PCRをやっていなから、無症状あるいは軽症の人を見落として、実際は、10倍とおっしゃいましたかね? 仰る通りです。当初から、無症状や軽症者が多くて、そういう人を我々の今のシステムでは探知できないのは仰る通りです」という発言を受けて、「(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないのか?」と問うているのだ。しかし、この質問に対し、尾身氏の回答は完全に論点をすり替えており、赤信号であると言わざるをえない。 【福山議員vs専門家会議尾身副座長質疑前半】 【質問】感染者数10倍の可能性 ↓ すり替え 【回答】東京都の陽性率  福山議員が尾身副座長に対する発言が抗議めいた口調になった理由は、「聞いている質問をはぐらかされたから」だと言える。

後半の検証

 引き続き、後半の質疑を文字起こしして確認していく。前半で福山議員の抗議を受けながら、尾身副座長は先ほどの東京都の陽性率の話に絡めて、答弁を続けていく。 20200511fukuomiqa2尾身副座長:「で、ここに引っかかっている人は実は日本の場合には医療機関に行く人は 普段、普通のコミュニティの人よりも赤信号)」 福山哲郎議員:「(感染者数)10倍はおっしゃる通りです。先生が言われたんだから尾身副座長:「いや、ちょっと待ってくださいね福山哲郎議員:「ちょっと短くしてください尾身副座長:「はい。はい。分かりましたそれで、実はそこで医療機関にかかっている人の中をピックしたのが7%です。そして、一般のコミュニティのリスクは医療機関に行く人よりもリスクは低いのでないかと考えるのが普通です。そうすると、実際、仮に東京都が7%の陽性率だとしますと、地域のコミュニティの一般は7%を超えることは普通は無いだろうと考えるのは、今のところ常識です。以上であります赤信号)」 福山哲郎議員:「全く答えて頂けませんでした。残念です。あの、私は当初のクラスター対応を批判しているわけではありません。検査を絞って重篤な患者さんを優先する医療機関の対応がまだ準備ができてなかった。理解してますが、これだけ感染経路不明な状況の中でそれから無症状や軽症の方が院内感染を広げているような状況があちこちあって、なおかつ岡江久美子さんのように検査してほしいけども自宅待機だと言われて容体が変化して亡くなっている方がたくさん出てくる。そして専門的ですけど、超過死亡は2月3月強烈に増えている。そういう状況の中で「今の(感染者数)15000だけではない」と尾身先生も西浦先生も言われている。そのことについて謙虚にしないと全体像が見えないんじゃないかと言ってるんです。」  後半の質疑について、内容を検証したい。  福山議員は後半も「ちょっと短くしてください」等の抗議をしている。さらに、尾身副座長が答弁を終えた後、「全く答えて頂けませんでした。残念です」という強い不満を示している。  一方、尾身副座長の答弁内容に目を向けると、どうだろうか? 福山議員の質問内容は前半と同様だ。しかし、やはり前半と同様に論点をすり替えており、赤信号とした。 後半質問】感染者数10倍の可能性 ↓ すり替え 【回答】東京都の陽性率が実際は7%を上回る可能性  さらに、答弁内容の結論に目を向けると、尾身副座長がここまで長々と答弁してきたことの結論とその根拠は以下のようにまとめられる。 【結論】 東京都の医療機関受診者の陽性率 7% > 東京都の実際の陽性率 【根拠】 医療機関の受診者よりも一般コミュニティは陽性リスクが低いから  ・・・当たり前すぎる。  あまりにも、当たり前すぎないだろうか。無発症者や軽症者も入れて調査する場合、感染者数は上がるかもしれないが、分母が大きくなるのだから、一般コミュニティが全員感染でもしていない限り、陽性率が下がるのは当然ではないか。  それに、福山議員は再三、5月4日の尾身氏自身の発言、「PCRをやっていなから、無症状あるいは軽症の人を見落として、実際は、10倍とおっしゃいましたかね? 仰る通りです。当初から、無症状や軽症者が多くて、そういう人を我々の今のシステムでは探知できないのは仰る通りです」という発言を受けて、「(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないのか?」と聞いているのである。感染者数の実数や陽性率を答えろなどとは言っていない。そしてこの問いには、尾身氏自身が4日の会見では「10倍とおっしゃいましたかね? おっしゃる通りです」と答えているわけだ。もしくは、この時のやり取りでは前ページでも書いたように「10倍か20倍か30倍かはわからないが、いまの数字よりは多いと思う」と答えている。この2つの回答を見れば「10倍いる可能性も否定できない」と解釈するのが普通だろう。陽性率の話にすり替えたりせずに、そう答えればいいだけの話である。  それを、専門家として国会で3分弱の時間を使って、質問者からの再三の抗議を受けながら、それでも答弁し続けるような内容だろうか?  尾身副座長自身もこの答弁内容を「今のところ常識です」と締めくくっているが、自分でも「常識」だと分かっている内容をなぜ長々と答弁したのか理解に苦しむ。(しかも、質問者が強い口調で抗議を続ける中で)  筆者はかつて、福山議員の言動に疑問を持ち、福山議員に対して批判的な記事を書いたこともある。だが、今回の質疑においては福山議員は確かに強い口調を用いており、参考人である尾身氏へのそれは前出のように議員として容認できるものではないにしても、恫喝にも聞こえた抗議は安倍総理による参考人への答弁前の不当な指示に対してだし、急かすような口調も参考人の要領を得ない回答に対するものであったと総括できる。
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悪意ある切り取りで報じた日テレ系「スッキリ」
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