カフェの業態は「街の性格を映す鏡」!?――山手線に誕生した「2つの新業態カフェ」その違いとは

原宿駅に誕生した猿田彦珈琲は「原宿オトナ化」の証?!

 続いて紹介するのが、96年ぶりに新駅舎となったJR原宿駅の2階に出店する猿田彦珈琲の新業態となる「猿田彦珈琲 The Bridge」(以下「The Bridge」)。  この店舗もスターバックス高輪ゲートウェイ店と同様に新駅舎上階に誕生したカフェでありながら、このThe Bridgeがターゲットとするのは打って変わって「上質なコーヒーをゆったりと味わいたいオトナ世代」だといえる。
神宮橋から見た新・原宿駅舎

神宮橋から見た新・原宿駅舎。窓には「猿田彦珈琲」の文字が。

 The Bridgeと猿田彦珈琲・従来店との大きな違いの1つはその「広さ」だ。同社の従来型の店舗は狭いものが多かったが、同店の面積は277平方メートル・座席数は140席と、同社の都内店舗では最大で、都心の駅内でありながらゆっくりとコーヒーを味わうことができる(とはいえども、取材時は開店直後であるため非常に混雑していたが)。  店舗への入口は改札の外から。店舗からは直接神宮前交差点にでることができるため、JR駅利用者でなくても入りやすい。原宿駅の新駅舎は線路を跨ぐ橋上駅舎となっており、「The Bridge」の名の通り、店舗もいわば「橋」のようなかたちになる。猿田彦珈琲によると、この名前には「作り手と客・日常と非日常・過去と未来を繋ぐ架け橋」という思いも込められているという。
「猿田彦珈琲 The Bridge」のエントランス

「猿田彦珈琲 The Bridge」のエントランス。
階段を下りると原宿駅東口・神宮前交差点だ。

The Bridgeと従来店とのもう1つの大きな違いが「高級感」。猿田彦珈琲といえば比較的ハイクラスなコーヒーを提供することで知られるが、この店舗ではさらにこだわりのハイエンドコーヒーを味わうことができる。

看板メニューはドリップ1杯1000円前後!

 そのなかでも看板メニューといえるのが独自の特別ブレンドコーヒー「猿田彦の夜明け-THE RISE OF SARUTAHIKO-」(ドリップ900円)だ。コーヒーの生豆をウイスキー樽で寝かせることでウイスキー特有の香りを豆につけた後に焙煎した「バジルエイドコーヒー」やゲイシャ種のコーヒーなど各国最高峰のコーヒーのみを厳選して独自にブレンド深煎りブレンドで、The Bridge限定販売の「原宿でしか飲めない味」となる。The Bridgeでは、このほかのメニューも「ドリップ1杯1,000円前後」のものが少なくない。  原宿といえば「若者の街」というイメージであるが、地価は大きく上昇傾向にあり、4月には駅前に「家賃月100万円以上」の高級レジデンスも備える複合商業ビル「ウィズ原宿」が開業するなど、近年は特に「オトナ向け」の高級店や高級マンションも増えつつある。このThe Bridgeもそうした「原宿オトナ化」の流れを組むものといえよう。
原宿駅舎から見た旧駅舎と「ウィズ原宿」

原宿駅舎から見た旧駅舎と「ウィズ原宿」。高層階は高級レジデンス(賃貸住宅)となる。
下層階には北欧家具「IKEA(イケア)」やアウトドア用品「Snow Peak(スノーピーク)」の都市型旗艦店などが4月25日に開業予定。

 もちろん、店内も落ち着いた「オトナな雰囲気」であり、和を感じさせられる落ち着いた内装が印象的。デザインコンセプトは「日本の路地」だといい、鳥のさえずりや雑踏、話し声などが混ざった店内BGMも唯一無二だ。このBGMは、音楽プロデューサーやDJとして活動する田中知之氏によるものだという。  新・原宿駅舎の特徴は「大きな窓」であるが、The Bridgeからも大きな窓越しに明治神宮へと繋がる神宮橋や神苑の森を見ることができ、優雅なコーヒータイムを楽しむことができる。余談であるが、明治神宮の御祭神は明治天皇と昭憲皇太后。「猿田彦命」は祀られていない。
「猿田彦珈琲 The Bridge」店内

「猿田彦珈琲 The Bridge」店内。
「開放的な大きな窓が特徴」という点はスターバックス高輪ゲートウェイ駅店とも共通している。
(猿田彦珈琲・ニュースリリースより)

 一方で、駅は「オトナ」のみならず老若男女、幅広い世代が利用する場所だ。原宿といえば強力なライバルとして挙げられるのが「タピオカミルクティー」であるが、今後も駅併設のカフェで「タピオカ2杯分の値段のコーヒー=オトナな価格」が受け入れられ、定着していくことになるのか注目される。 The Bridgeの店内では、最高級コーヒー以外にも原宿駅社員と猿田彦珈琲が共同開発したオリジナルブレンド「原宿駅ブレンド」(ドリップ540円、コーヒー豆100g 900円)や、アメリカのガラス製食器ブランド「Fire-King」と原宿駅・猿田彦珈琲がコラボレーションした旧駅舎モチーフの「スタッキングマグ」(3600円)などといった数多くの当店限定商品が販売されている。  店内でコーヒーを飲まずとも、そしてコーヒーが苦手な人でも「原宿みやげ」のために立ち寄ることもオススメだ(いずれも価格は税別、コーヒーは時価のため価格変動の可能性あり)。
猿田彦珈琲 The Bridge限定・スタッキングマグ

猿田彦珈琲 The Bridge限定・スタッキングマグ(猿田彦珈琲・ニュースリリースより)

カフェの業態は「街の性格を映す鏡」

 「高輪ゲートウェイ駅」と「原宿駅」――それぞれの新駅舎はほぼ同時に開業したものの2つの「新業態カフェ」は全く異なった業態となった。  このほかにも、3月26日にはJR五反田駅に新しい駅ビル「アトレ五反田2」が誕生するなど、都心の駅では東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて駅舎や駅ビルの再整備を行っているところが多くある。  カフェの業態は「街の性格を映す鏡」であるともいえる。フリーパスなどを使って駅舎や駅ビルをはしごして、「その駅ならではのカフェ」を探してみるのも楽しいであろう。 <取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
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