また、舞鶴市から車で約40分の距離にある福知山市では、2017年6月から
「三恵福知山バイオマス発電所」(以下、三恵発電所)というパーム油発電所が稼働している。同発電所周辺にはパーム油独特の甘く腐ったような悪臭が漂い、70デシベル以上の騒音(1m以内の会話でも大声が必要)が響き、住民は頭痛やめまい、吐き気や食欲不振などに見舞われている。
舞鶴パーム油発電所はその三恵バイオマス発電所の40倍もの出力がある。森本代表は「舞鶴では、それよりひどい被害が広がるのでは」との不安から、学習会の最後に手を上げ、「パーム油発電所建設に反対します。何らかのアクションを起こしましょう!」と発言。この発言を機に「守る会」が結成されたのだ。
「守る会」は2019年10月上旬に福知山市を視察する。そこで見たのは「三恵発電所」の周辺にいくつも掲げられていたその稼働停止を求める横断幕や昇り旗だった。
その視察中に森本代表は偶然、三恵発電所に抗議の声を上げている市民団体「三恵福知山バイオマス発電所騒音悪臭問題対策会議」(以下、対策会議)の三谷義臣代表に出会う。
三恵発電所の稼働は、三谷代表によれば“裏切り”に近いものだったという。
2017年2月に行われた稼働前の住民説明会で、事業者である三恵観光(株)は
「防音壁の設置で社屋外での騒音は50デシベル以下に抑える。臭いも植物油特有の軽く甘い匂いであり問題にならない」と説明した。
地元自治会はこの説明に安心して、同年6月21日に三恵観光と「近隣住民に健全で快適な環境保全に努める」などと記した協定書を交わした。
ところがこの発電所が稼働したところ、悪臭と騒音が24時間続く毎日が始まったのだ。
あまりの悪臭に「いつか死んでしまうのではないか……」
大阪市の市民団体「ウータン」の石崎雄一郎氏(左)。舞鶴市の「守る会」が作った旗の前に立つ
ある女性住民は三谷代表にこんな手紙を送っている(要約)。
「
臭いと音で体調が悪くなり続ける現状に、いつか私は死んでしまうのではないか……。他の病気が発症してしまうのではないか……。本当に我慢の限界と精神的、肉体的限界がかなりきております。家の中にまで臭いがあり、床下の換気口を土嚢でふさぎ、空気清浄機を強にして閉めきっておりますが、吐き気がすごいです。
これだけの私たちの苦痛を市役所なり、三恵やお国の方に伝えても何もかわらない現状に、悔しさと怒りと絶望感もあり、イライラした気持ちをおさえることのストレスから、この前は恥ずかしい話なのですがとっさに扉を拳でなぐってしまい、青く手が腫れてしまいました(後略)」
こうした経験は、この女性に限った話ではない。2019年6月から8月にかけて、市の民生児童委員が発電所周辺の136軒で訪問聞き取り調査を実施したところ、以下のような結果が出ているのだ。
★悪臭について
▲気分不快、ストレスを感じる……75件
▲窓が開けられない……23件
▲頭痛・めまい・吐き気・嘔吐・食欲不振……12件
▲アレルギー性鼻炎ひどくなった……5件
等々
★騒音について
▲騒音が耳にこびりつき、ストレスや精神不安が起きる……52件
▲窓を閉める……21件
▲不眠……14件
▲使用できない部屋がある……9件
等々