ーー今回の外山さんの“不要不急の外出闘争”とやらについても訊いておきますが、具体的には都内の高円寺駅前で連日、路上宴会を繰り広げていたんでしょう?
外山:まさか!私はあくまで“独りで”飲んでいるだけです。最初に言ったように、もともとは、もちろん
ヒステリックな“自粛”強要の風潮に対する抗議行動として、居酒屋での宴会を計画していたんです。ところが「たぶん最低でも30人、場合によっては50人ぐらい」で居酒屋を予約しようとしても、時節柄ものすごく警戒されて、受け付けてもらえないんですよ。
それで宴会はあきらめて、しかし私は1人でも闘う、と。GW中の5月1日から6日まで毎日19時から、“自粛”強要への抗議の意思を込めて高円寺駅南口広場で1人で黙々と缶ビールを飲む、というまあ
“逆ハンスト”闘争を繰り広げるから、くれぐれも観に来たりするなよ、とツイッターなどで呼びかけたわけです。
ーー“繰り広げるから来るな”とは何ですか、“から”とは。接続詞がおかしくないですか?
外山:ちょっとハショりました。繰り広げる“けど”、人がたくさん集まって「無届集会を主催した」とか濡れ衣を着せられて、公安条例違反で逮捕されたりすると困る“から”来るなよ、と。
ーーだったらわざわざ告知しなきゃいいんです。
外山:いや、私は一応、活動家ですからね。現在の状況をこんなふうに考えていて、だからこういう闘争をやる、というのは常に人民に告知します。それによって、「やっぱり立派な活動家だな。今回もちゃんと闘っているんだな」と評価してもらわなきゃいけないんですよ。で、今回は高円寺の路上で“独り酒”をやるから……あ、やる“けど”、来るなよ、と広く周知徹底を図ったという次第です。
ーーもう手っ取り早くその周知徹底の結果を教えてください。
外山:まったく人民というのはコントロールしにくいものですね。こんなにしつこく繰り返し繰り返し、“絶対に来るなよ、いいか、5月1日から6日まで毎日19時から数時間、高円寺駅南口広場だぞ”と来ないようにアナウンスし続けているというのに、「あれ? まさかあの伝説の政見放送で有名な外山恒一さんではありませんか?」などとわざとらしく偶然を装って、次から次に缶ビールとか片手に寄ってくる人がいて、気がつくと毎晩、総勢100人ぐらいになっちゃうんですよ。明らかに知っててわざと来たに決まってるんですけど、わざとだという証拠があるわけではないし、怒るわけにもいかないでしょ? しょうがないからズルズルと立ち話を続けることになって……まったく迷惑な!
ーー寄ってくるのは主にどういう人たちですか?
外山:それはバラバラです。やっぱり相変わらず、単に“
政見放送のファン”だというミーハーな人たちが大半ですよ。もちろん3分の1ぐらいは、右翼だったり左翼だったりの思想的・運動的な背景を持っている人もいるようです。
ーー外山さんのもとには左右双方から人が集まってくる、という点も“相変わらず”と?
外山:あくまで左右の“異端派”ですけどね。そもそも右も左も保守もリベラルも、今回は大半が“自粛”強要の同調圧力に屈したり、あろうことかむしろ率先して同調を求める連中まで出てる始末でしょ。“反自粛”派は右でも左でも少数派です。ただ、集まってくるメンツが日に日に濃厚になってもいて、3日目(5月3日)なんか、反米右翼と中核派のそれぞれ現役活動家の若者たちが肩を組んで革命歌を高歌放吟し始めたり……不穏きわまりありません。
ーーやっぱり若者が多いんですか? まあさすがに感染した場合のリスクを考えれば、高齢者は来ませんよね?
外山:それがそうでもないんです。もちろん大部分は若者で、いまどき右翼や左翼の学生運動を再興しようと頑張っている感心な学生たちもかなり含まれます。20代の若者と、30代・40代が半々ぐらいという印象かな。しかし老人も毎晩、2、3人は混じっています。言うまでもないかもしれませんが、かつての過激な学生運動の経験者たちですね。さすが命知らずというか、この革命の機運に乗じるためなら死をも長期入院をも恐れないという、覚悟の定まった老人たちです。
ーー警察は来ますか?
外山:さすがに公安は少なくとも遠くから監視ぐらいはしてるんじゃないかと思いますが、よく分かりません。近隣の交番の制服警官は、毎晩登場してはいます。「主催者はどなたですか?」と訊かれて、「そんな人はいませんよ。それぞれ個々バラバラに何人か飲んでたのが、なんとなく話しかけて意気投合したりしてるうちに、いつのまにか人が増えてて……」と正直に説明すると、べつに外で酒を飲むのが何か違法というわけでもないし、警官たちもどうしていいのか分からないようで、「あんまり大声で騒がないでね」的なことを言い残して、やがていなくなってしまいます。
ーーそんな白々しい言い訳がいつまでも通用するとは思えないんですが……。
外山:私もとっても心配です。ただ1人で黙々と野外で酒を飲んでいるだけなのに、今夜こそ“無届集会の首謀者”として不当逮捕されてしまうんじゃないかと、念のために獄中ではこれでも読もうと何冊か用意してカバンに詰め込んで、連夜の“独り酒”闘争に臨んでいます。でもまあ、逮捕されるとすれば今回は公安条例違反とかでしょ? 私は前科3犯の歴戦の革命家ですが、そんなアカラサマに政治犯っぽい罪状で逮捕されるのは初めてで、面映ゆいやら照れくさいやらコッパズカシイやらで、想像するだけでドキドキが止まらなくていけません。
いかがだろうか。本サイトとしては外山氏の主張や行動の多くは到底支持できないものだが、それでもなお、聞くべき点もあると判断し、本原稿を掲載することにする。10代の頃から何よりも監視社会・管理社会に対して異を唱えてきた外山氏の考え、そしてそれに同調する人々が左右を超えていること。まずはそこに目を向けて頂きたい。
<取材・文・撮影/HBO編集部>