ーーだったらどうしろと言うんですか? 自粛しないで街に繰り出し続けて、感染拡大させるほうが正しいとでも?
外山:さきほど数字を示して述べたとおり、そもそも私は今回のウイルスは全然たいしたものではない、せいぜい“チョイわるウイルス”にすぎないんで、まったく騒ぐ必要はないと思ってますが、それはとりあえず措いて、仮にコロナがそれなりに恐ろしいウイルスだとしましょう。だとしても正しい方策は一つです。
重篤化する可能性が高い老人や病人だけ保護して、とくに若い人たちはこれまでどおり自由に出歩いてもらえばいいんですよ。若い人たちがコロナに罹って死ぬ確率は、人口比から言えば交通事故で死ぬ確率よりも圧倒的に低いんですから。
ーーだけどその若い人たちを媒介として、老人や病人たちまで感染させてしまうかもしれないじゃないですか。
外山:全国民に一律10万円を配るより、政府が全国各地の宿泊施設をしばらく借り上げて、老人や病人に無償で提供するほうがずっと安上がりだと思いますよ。このまま何ヶ月も“自粛”させる気なら、「10万円」も1度で済むわけありませんし、それ以外にも休業補償費とかで、莫大な税金を投入しようというんでしょ。
で、仮に老人や病人への“避難所”提供という方針に転換するとしても、“避難所”行きを強制してはいけません。そこは我らが安倍ちゃんも「自粛を強制すると圧政になってしまう」と珍しく的確な認識を表明したのと同じことです。多少のリスクを負ってでも普段どおりの生活をしたいという老人や病人には“自己責任”で自由にやっていただいて、“60歳以上”とかの条件つきで希望者にだけ安全な環境を無償提供する。あとは若い世代を中心に通常どおりに社会を動かしてもらって、ほとんど犠牲なしに感染拡大、抗体を持つ人の増加、やがてパンデミック収束です。同時並行で、とくに医療関係者、介護関係者を中心に抗体検査を繰り返して、抗体ができた人から“避難所”にどんどん投入していく。……というので何か問題でも?
ーーいや、えーと……。
外山:で、“人類の偉大な指導者”たる革命家の私はそんなふうに“正解”を分かってますが、現時点では私にはまだ大した発言力・影響力はありませんし、安倍ちゃん率いるFラン政府がそのうち“正解”に辿りつくとも思えませんし、このままズルズル&グダグダな展開が続いていくのを延々と見せられるんだろうなあとウンザリというか、ニヤニヤしているわけです。
ともかく、“大半は死ぬ”というわけでもない程度のリスクから老人たちを守るために、若者たちの行動を規制し、犠牲を強いるというような方針は絶対的に間違っています。Fランの日本よりはよっぽどマシなはずの諸外国でも似たような大間違いの方針が採用されているのは、要するに各国とも政治・経済の要所を占めているのが主に老人たちであるという点では共通しているからでしょう。権力を握る老人たちが、我が身可愛さのために若者たちを踏みつけにしているわけですよ。
だから諸外国では、そのことに気づいている多くの若者が“自粛”強要に怒って暴れたりしています。日本の若者はすっかり去勢されていて、まあそれがつまり没落する一方の斜陽の国であるということでしょうが、どうしようもありませんね。だからせめて私が、まだ去勢されきってはいない少数の若者たちに向けて、街に繰り出せと煽りまくっているんです。
ーーしかし、アメリカでは反自粛デモ主催者の若者も感染してましたよ。
外山:それに、多くの人が言うように、若者たちはこの何十年もずっと、老人たちの世代の尻拭いをさせられてきたし、このままだと今後もずっとそうなんです。だったらこの機会に、老人たちにはしばらくどこかに引きこもっていただいて、その間に若い世代で社会を回すようにする。何ヶ月か経って老人たちが復帰してきても、“すでに若い連中だけで充分やれてますんで”と、あらゆる分野で世代交代を実現させてしまえるじゃないですか。
……もちろん私が言うのは、“コロナなんてたいして怖くない”というのが前提です。しかしそのことはすでにはっきりしているでしょう。死にまで至るのは主に老人で、それでも感染者の数%、判明していない感染者もたくさんいるはずですから実際にはそれ以下、まして若者はまず滅多に死なないことはもはや明らかです。繰り返しますが、やるとすれば“老人・病人だけ避難させておけばいい”という程度のものです。政府にそのような政策転換を迫るためにも、本当は多くの若者たちが街に繰り出しまくって、政策決定権を握る老人たちを恐怖させなければいけません。
しかし現時点ではそういう政策転換云々よりも私はむしろ、冷静な判断力を失った大衆がヒステリーを起こして、ちゃんと“自粛”しているかどうかを互いに監視し合い、食うために営業を続けている小規模な飲食店などにイヤガラセをしたり、警察に通報したりという、まさに人心荒廃、すきみきった状況が加速的に進んでいることのほうがずっと心配です。
ーー「自粛」を強制するかのような風潮、さらに妙な同調圧力や「自粛警察」への違和感については同意できます。それゆえ、“若者を煽って街に繰り出させる”という外山さんのやり方にはまだ大いに疑問もありますが、10代の頃から何よりも監視社会・管理社会に対して異を唱えてきた外山さんが、そこを最も憂慮しているというのは、脈絡としては分かります。
外山:実は私は、
相対的には安倍ちゃんを支持しているんですよ。多くの人が批判するように、たしかに安倍ちゃんには“危機管理能力”とやらが根本的に欠けているのかもしれません。しかしだからこそ、
コロナ・パニックに乗じた管理社会化の進行はこの程度に抑えられているとも云えます。安倍ちゃんの人気凋落に反比例するように次期指導者として待望されている
小池百合子や橋下徹が最高権力者であったなら、とっくに罰則を伴う外出禁止措置なんかが取られていたでしょう。ここぞとばかりに安倍ちゃんの“無能”ぶりを論難している他の野党でも一緒です。私は
よくぞ“無能”な安倍ちゃんが総理でいてくれた、まさに不幸中の幸いだと胸をなでおろしています。
ーーそれもまたお得意の“ほめ殺し”ですね?
外山:滅相もない。だいぶ本気です。
安倍ちゃん以外の誰が政権に就いても、マス・ヒステリーに迎合する監視社会化・管理社会化が急速に進むに決まっていますから、私はもう安倍ちゃんにあと30年ぐらい首相であり続けてほしいですよ。