「経産省は何処にありや 何処にありや。全世界は知らんと欲す。」*
〈*WHERE IS RPT WHERE IS METI RR THE WORLD WONDERS〉
このアルコール危機において、
エチルアルコールの大部分を支配する経産省の姿が全く見えません。あの財務省ですら医療機関向けに緊急免税措置を実現したのに経産省は何もしていません。実際、” 経産省 手指消毒 アルコール”で検索しても、厚労省に便乗した宣伝一つ*しか出てきません。
〈*
マスクや消毒液やトイレットペーパーの状況 ~不足を解消するために官民連携して対応中です~ 2020/05/07経済産業省。実際には厚労省の仕事のうえに、アルコールのラベルを見る限り、経産省所轄、酒税相当の加算額賦課品である〉
実は工業用のアルコールとして大量に流通している
95%エタノール(不純物は水)の多くは、非課税です。これを一般アルコールと呼びます。アルコール事業法の対象となり、製造・輸入・販売・使用すべてにおいて
経産省による許可が必要です。また、年に1度使用量など決められた項目の
経産省への報告義務があります。また、許可を得るためには
登録免許税1万5千円まで請求されます。手続きは煩雑で、たいへんに狭き門です。
この一般アルコールは、95%エタノール、5%水ですので、エタノール自体の毒性を除けば人体に影響ありません。無水アルコールのようにペンタンなどの有機溶媒を添加していませんので全く人体に問題ありません。
この一般アルコールは、一斗缶(18L)あたり18000円の「加算額」が無いためにたいへんに低廉です。概ね500mLあたり250円程度でしょう。流通経費をくわえても500mLあたり500円程度です。しかも膨大な量が国内に流通しています。
勿論、お酒への不正流用は防ぐべきですので、経産省と厚労省の連携で、一般アルコールに人体に無害である品質の2-プロパノール(IPA)を出荷時に5%混ぜれば良いのです。医療機関相手の場合は、IPAを需要家側で添加する形にして、写真と管理番号等でその証拠を報告させても良いでしょう。最善なのは、既存の消毒アルコールメーカーに協力を有償で求めるものです。出荷までやってもらえます。IPAを添加すればその苦みで酒類への転用はできませんし、共沸しますので蒸留によるIPAの分離は困難です。
経産省は、現在事実上官邸を支配する官庁で、首相補佐官も経産(出身)官僚です。
大失敗に終わり、400億円前後のお金を無駄にしたアベノマスク事業も経産官僚の発案です。
厚労省と財務省は、官僚による省庁間調整でできることはやっていますが、
経産省は何もやっていません。これは看過できないことです。
不織布マスクは、三月下旬には中国から船便で大海嘯(かいしょう)の如く日本に押し寄せていることを筆者ですら人づてに掴んでいました。輸送、荷役、通関などで20〜30日を要しますので四月中旬にはマスクが市中に大量流通することは自明で、筆者は3月末に五月連休明けには大きく値崩れが始まることまで予想できていました*。筆者は50枚3000円割れを5月末と予測していましたが、執筆時点で2500円まで値崩れしており、筆者の予測より事態の進行は早いのですが、これも正確に予測した人物が複数います。
〈*このため筆者は手持ちの50枚の備蓄で持ちこたえられると判断し、購入しなかった。但し使ったマスクは、乾式処理で滅菌・洗浄し、保管している〉
アベノマスク事業は、4/1日に表明され、首相直轄で入札も無しに進められましたが、これは
首相補佐である経産官僚の発案です。ところがこの時点で事業の必要性は全くありませんでした。この
大失敗が経産省によるものであることが特徴で、やらないで良いことは率先して発案し、アルコール危機には、その支配者であるにもかかわらず何もしてこなかった、極めて深刻な経産省による不作為事案と言えます。安倍晋三首相もとんでもないポンコツ役人共がそばに居るもので気の毒です。
非課税のアルコールとしては、変性アルコールとよぶ、工業用途にIPAなどを混ぜたものがあります。気がつく人は、1月中に一斗缶で購入したようですが、現在は全社出荷停止です。消毒用につかわれてPL法沙汰になったらたまらないということでしょう。
変性アルコールはメタノール添加のものもあり、これは人体に有害ですが、95%エタノールに1-プロパノールや2-プロパノールを添加したものは、無害ですし、「消毒用アルコールIPA」とだいたい同じです。しかし、薬機法の認可を受けていませんので人体には使えません。いわゆる自己責任で使うにしても、工業用の薬品を人体に使うのは、成分表示にない不純物がもしもあれば危険です*。筆者は、特定アルコールのあまりの高さに変性アルコールを実験用途に導入したことがありますが、成分表からはあり得ない油膜が発生し、苦情多発ですぐに断念しました。
〈*工業用薬品を食べ物に使い、その不純物であるヒ素によって大規模食品公害事件を起こしたのが森永ヒ素ミルク事件である〉
従って、筆者は変性アルコールの消毒への流用はお勧めしません。もしも何かがあったら悲惨です。
エタノールは、水回り以外でコロナウィルスをノックアウトするには最高の消毒剤です。
こうかはばつぐんで、毒性は低く、安全で、衣服や身の回り品などについてもだいたい無害です。水回りには
次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターを薄めたもの)でコロナウィルスをノックアウトできます。
エタノールと次亜塩素酸ナトリウムは、コロナウィルスと闘うために市民にとっても必須のアイテムです。それに酒税だ、「加算額(経産省)」だのとケチくさいことを言って流通を混乱させ、市民も事業者も医療、介護・福祉、運輸・輸送・流通、行政と言った現場もアルコールを求めて右往左往、転転売屋にっこりなど馬鹿らしくて仕方有りません。アルコールはそこここに膨大にあるのです。
ここは経産省がドーンと一般アルコールを解放すれば良いのです。厚労省も薬機法を迅速に適用して簡易的IPA添加を認めることで協力すれば、下がりに下がった市民からの評価も少しは回復するでしょう。
大切なことは、省庁への号令を出し、役人を使う仕事は、政治家の仕事と言うことです。かつて平成初期までの自民党政権であるならば、とっくにやっていることです。役人のマリオネットでしかない政治家など必要ありません。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ6
<文/牧田寛>