今こそ学べるゾンビ映画3選。人の善意も利用するウイルスの恐ろしさとは

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 緊急事態宣言が5月31日まで延長され、自粛疲れや経済の停滞がさらに深刻化している。こうした時に明るい映画で楽しい気分になるのも良いが、ウイルスのパンデミックなどタイムリーな要素のあるゾンビ映画を観るのも、意義のあることだと提案したい。  ここでは今の現実の世の中に通じる、作品としてのクオリティが高い3つのゾンビ映画を厳選して紹介しよう。

1:『28週後…』(2007) 善意さえもウイルスにとっては好都合かもしれない

28週後 全力疾走するゾンビたちが襲いかかる、残酷描写とホラーテイストの強い作品だ。『28日後…』(2002)の続編であるが、物語やキャラクターはほぼ独立しているので、そちらを観ていなくても楽しめる。幼い姉弟と彼らを守ろうとする大人たちの逃避行には、シンプルにハラハラできるだろう。後に『アベンジャーズ』(2012)でもメインキャラクターを演じるジェレミー・レナーが、お調子者だが理性的な軍人に扮しているのも面白い。  オープニングは薄暗い家屋での籠城、そして大量の凶悪なゾンビからの命がけの逃避という苛烈なシーンから幕をあけるが、メインで描かれるのは「感染拡大が一旦は収まった後」の物語であるということが重要だ。イギリス本土が壊滅状態に陥ったものの、生き残った市民は国外への脱出に成功し、5週後にはゾンビたちは餓死。安全宣言が出されたロンドンでは軍の監視下のもと復興が進んでいる……という状況なのである。  そして、劇中では「善意による行動がさらに事態を悪化させる」という悲劇がいくつも提示されることになる。観てほしいので具体的には書かないでおくが、例えば生き延びた父親の“愛情ゆえの行為”が、一旦は収束したかに思えたウイルスの感染拡大の第2波の原因となり、封じ込めに失敗、尋常ではない被害をもたらすことになるのである。  この悲劇が起こったのは、劇中のある人物がウイルスに感染したもののゾンビにならなかった、つまり無症候性キャリアであったことが理由だ。ご存知の通り、実際の新型コロナウイルスも感染しても症状が出ないことが多く、だからこそ誰もが自覚なしに感染を広げてしまう可能性がある。それこそ、十分な対策をすることなく好きな人や家族に会いに行く、経済的に困窮している施設や観光地に訪れるといった、まさに善意による行動のために……。ゾンビのように症状が明白なものよりも、むしろ無症状のほうが感染拡大のリスクが高いのかもしれない、ということに改めて気づかされるのだ。  『28週後…』で描かれる「善意による行動がさらに事態を悪化させる」というのは、凶悪なウイルスのある種の真実。ウイルスにとって、人間の善意はパンデミックのためには好都合と言い換えてもいい。それを認識し、気を引きしめることがことができる本作を、ぜひ観ていただきたいのだ。  

2:『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016) 社会の縮図と差別をする人間の本性がわかる

新感染 舞台のほとんどが列車の中、その限定的な状況で展開するゾンビとの攻防戦には驚きのアイデアが満載、見事な伏線回収や迫力の見せ場など、並々ならぬエンターテインメント性と完成度を誇る韓国製の映画だ。直接的な残酷描写は最小限にとどめられておりG(全年齢)指定であるため、グロいのが苦手という方にもオススメできる。  さらなる特徴は、この列車にいるキャラクターがそのまま社会の縮図になっていることだ。ファンドマネージャーという利益優先の仕事に就く主人公、妊娠している妻を思いやる屈強な男、仲の良い老姉妹、ホームレスの中年男性、幼馴染同士の高校生の男女、バス会社の乗務と、それぞれに「こういう人は現実にもいるなあ」と思える社会的な特徴がある。  そんな彼らはゾンビに襲われたために、隠されていた本性を見せることになる。助け合いや自己犠牲など尊い精神のもとで行動する者がいる一方、感染の疑いがある者への容赦のない誹謗中傷や差別を行う者もいる。現実での新型コロナウイルスの感染でも同様だ。命の危険が迫っている時に、果たして正しい行動ができるのか?ひょっとすると不当に誰かを迫害したり、見捨てたりしないか?などと、問われているかのようだ。  さらに、社会的地位の高い者が弱者を見下し、独善的な行動を取ってしまうということにも、身につまされる方が多いだろう。アカデミー賞を受賞し大ヒットした『パラサイト 半地下の家族』(2019)に通ずる格差社会の問題も確実に本作には反映されている。だからこそ、この『新感染 ファイナル・エクスプレス』は新型コロナウイルスが蔓延した今の世の中で、自身の社会における立場も省みながら、言動や行動を律するきっかけにもなり得る。  また、劇中ではゾンビにより都市が明らかに壊滅状態に陥っているにも関わらず、テレビで「政府の迅速な対応により事態は鎮静に向かい、近日中に収束するとみられます」「今は政府を信じて動揺せず力を合わせて乗り切る時です」とアナウンスされるシーンがある。根拠のない、そうした言動が現実でも信用ならないということは、言うまでもない。
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幼稚園の先生は命がけで子どもたちを守っている!
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