山口:「国は隔離を解いたが、
国民が慎重に捉えているようですね」
原口:「中国人は感染には慎重です。
日本人以上に安全に対する意識は高いでしょう。北京市内に一部残っている城壁は、その昔、遠征から戻ってきた兵士がその城壁の外部で隔離をまず行い、その後、城内に入ってくるために作られたものと聞きます。
四方に海に囲まれ穏やかに暮らしてきた日本人とは全く異なります。日本で報道されている観光地に向かう中国人像は
無邪気に病気に鈍感な中国人ということでしょうが、実は全く違い、慎重なのです」
山口:「トランプ大統領は、4月30日に『武漢ウイルス研究所が新型コロナウイルスの発生源になった可能性を確信している』と述べています。同研究所やアメリカの情報機関は否定していますが、北京市民はどのように捉えているのでしょうか」
原口:「
中国政府がなにかを隠しているというのは、みな感じているところです。発生以来、当局に事実を訴えてきた
医者や有力なジャーナリストを続々と姿を消していたり、発生当初は武漢ウイルス研究所に関する記事をよく目にしたがその後、それらが消えていますので、こりゃ、おかしいと思っています」
山口:「おかしいと思っていることは、声になっているのでしょうか」
原口:「こういうことに関して余計なことはみな、話しません。2日前、久々に理容室で整髪してもらっているときに、担当してくれたお姉さんに西側諸国が中国に損害賠償を求める国が出始めているけどどう思うと聞くと、一瞬、困った顔をしたものの、即座に『
西側諸国は問題をすぐに政治問題化するから困ったものだわ』と余裕の表情で答えてくれました。理容室のお姉さんですらこのように即答できるってすごいでしょう(笑)」
山口:「
世論のコントロールが相当程度されている状態ですね」
原口:「中国は今や、新型コロナウイルスを抑え込んだ偉大な国家という位置づけをしている最中ですし、このことは14億の人民の自尊心を満足させるに十分な状況です。中国責任論なんて馬鹿なことを言わないで!ということでしょう。公式の立場ではこういうことになるでしょう。
ただし、
全員が全員、そのような大国主義的な価値観では言っているわけではありません。これ以上はここでいうのは差しさわりがあるのでこの話はこの辺で」
モチベーションファクター株式会社代表取締役・山口博氏
<対談を終えて>
原口さんのサポートをいただきながら、私も中国でモチベーションファクターを梃にした経営実践力向上プログラムを実施したり、書籍を出版させていただいている。私の印象は、中国人ビジネスパーソンの行動は、驚くほど迅速なこともあれば、逆に遅延することもあり、難儀することが多い。原口さんから最新の状況を聞き、対応の迅速さの裏側には、徹底した隔離政策と言論統制があることを、あらためて感じざるを得ない。(モチベーションファクター株式会社・山口 博)
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第188回】