安倍首相の緊急事態宣言の延期判断への疑惑。危機において国民に苦難を強いるなら意思決定プロセスを詳らかに公開せよ

緊急事態宣言延長の会見を行う安倍

緊急事態宣言延長の会見を行う安倍首相(政府インターネットTVより)

緊急事態宣言の延期決定プロセス

 5月4日、安倍晋三首相は新型コロナウイルス感染症対策本部にて、同月31日までの宣言延期を決定しました。首相は、この決定プロセスについて「専門家の皆様の見解を踏まえまして、本日、諮問委員会からも御賛同いただき、4月7日に宣言いたしました緊急事態措置の実施期間を、5月の31日まで延長することといたします」と、本部会議の締めくくりで述べています。  首相が専門家の見解を聞いたのは5月1日でした。この専門家とは「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のことで、首相に対し「累積の感染者は1万人を大きく上回り、医療現場は依然厳しい状況にあることから、当面引き続き国民の皆様の御協力が必要」との提言を示しました。これを受け、首相は「西村大臣に対しまして、現在の緊急事態宣言の枠組みを概ね1か月程度延長することを軸に、専門家の皆様の御意見を伺いながら、地域の感染状況に対応した対策を速やかに調整するよう、指示」し、4日の本部会議での決定となったわけです。  この「専門家会議」は、新型コロナウイルス対策本部の下に設けられています。「医学的な見地から助言等」を行うことが任務です。12名の医学・医事関係の研究者等で構成しています。  また、首相が諮問委員会の賛同を得たのは5月4日の本部会議前でした。諮問委員会とは「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」の下に設けられている「新型インフルエンザ等対策有識者会議」のさらに下に設けられている「基本的対処方針等諮問委員会」です。諮問委員会は、新型インフルエンザ等対策特別措置法第18条で首相が定めることとされている「基本的対処方針」に意見を述べることが任務です。諮問委員会は、16名の医学・医事関係の研究者等で構成しています。  形式的には、医学の専門的な求めを受けて、慎重な決定プロセスを経たわけです。首相は5月1日に専門家会議の提言を受け、5月4日に方針案を作成して諮問委員会の意見を聴き、同日の本部会議で宣言延期を決定しました。専門家集団の求めからスタートし、別の専門家集団の意見も聴いてダブルチェックした上で、決定をしたことになります。ただし、専門家会議を構成する12名の委員は、全員が諮問委員会の委員を兼務していますので、実質的にはダブルチェックといえません。

安倍首相が国会で虚偽答弁か?

 問題は、上記のプロセスが形式に過ぎず、実質的な意思決定プロセスが別に存在することです。医学的な見地から延長を求められたという公式発表は、フェイクとまでは言えないものの、中身がない可能性が高いのです。  宣言の延長という政府決定の正しさ(あるいは間違い)とは異質の問題です。誰がどのような理由から決定したのかという、プロセスの問題です。たとえ決定が正しくても、プロセスが誤っていれば、そこから教訓を得ることはできず、次の機会には間違う可能性が高くなります。  毎日新聞の報道によると、首相は4月30日に自民党の二階俊博幹事長と面会し、宣言延長の方針を伝えました。時事通信の首相動静によると、その時間は同日の午後4時15分から38分の間です。専門家会議の提言は翌日ですから、専門家の求めの前に、宣言延長が実質的に決まっていたことになります。  それでは、首相はいつどのようにして宣言延長を決めたのでしょうか。興味深いことに、首相動静を見ると、二階幹事長が首相執務室を出た後の4時50分、政府のコロナウイルス対策の首脳陣が執務室に入室しています。「加藤勝信厚生労働相、菅義偉官房長官、西村康稔経済再生担当相、西村明宏、岡田、杉田和博各官房副長官、北村滋国家安全保障局長、和泉洋人、長谷川栄一、今井尚哉各首相補佐官、樽見英樹新型コロナウイルス感染症対策推進室長、秋葉剛男外務事務次官、藤原誠文部科学事務次官、鈴木康裕厚労省医務技監が入った」とあります。さらに、その全員がいったん出た後の5時31分に、尾身茂基本的対処方針等諮問委員会会長、西村経済再生担当相、樽見新型コロナウイルス感染症対策推進室長が入室しています。  少なくとも30日においては、専門家が先でないことは間違いありません。最初に自民党の二階幹事長、次に政府首脳、最後に専門家の尾身氏という順番です。ちなみに、二階幹事長の入室前は、朝からずっと国会審議に出席していましたので、その前に尾身氏らに面会していれば、首相動静に記載されます。  その30日午前の参議院予算委員会で、首相は宣言の延長について、これから判断すると答弁しました。毎日新聞の報道によると、首相は「専門家は、ぎりぎりまで状況を見ながら判断をしたいと言っている。専門家の分析と意見をいただき、判断したい」と答弁しています。  つまり、同日の国会審議の段階では決定しておらず、審議直後の二階幹事長との面会では決定していたことになります。予算委員会は4時9分に散会し、首相は13分に官邸に着き、15分に幹事長と面会しています。首相の答弁と二階幹事長の発言の両方を信じるならば、このわずか6分間の間に、重大な判断が下されたことになります。その間、首相動静に尾身氏ら専門家や西村担当大臣らと会った記載はありません。  もちろん、現実には違うと考えられます。ただ、首相の「これから判断する」との趣旨の答弁が虚偽でなければ、そのような説明のつかない状況で決定を下したことになるわけです。
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科学的根拠とは無縁の、政治判断としての宣言延長
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