新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各大学はオンライン授業の導入を推進している。既に授業が行われている大学も多く、初めての試みに対して教師や学生からは様々な意見が出ている。
この状況の中、他大学に先駆けてオンライン授業を開始したのが東京大学だ。今回、『
東大パズル王 世界でいちばんアツいパズル』(KADOKAWA)などの著者で、東京大学経済学部3年生の
谷政一郎さんにオンライン授業を受けた感想を聞いた。
「自宅で好きなように授業を受けられることには助けられています。カメラをオフにすればこちらの様子は映らないので、コーヒーを飲みながら、筋トレをしながらなど自由なスタイルで受講できます。また、登校する必要がないので、移動時間がかからず、随分と生活にも時間的な余裕が出来ました」
好きなことをしながら受講できる、通学に時間が掛からない……と、メリットの方を強く感じているようだ。谷さんは、こうしたメリットを持つオンライン授業と通常の授業を比較してまとめたツイートを作成。すると、28万インプレッションを獲得し多くの共感を呼んだという。
しかし、オンライン授業では教授に直接質問しにくいなどのデメリットはないのだろうか。谷さんは、その点はむしろメリットに繋がっていると話す。
「
質問はしやすくなったと思います。オンライン授業で使われるZoomなどのアプリにはチャット機能が備わっているので、質問や相談したいことを教授とやり取りできます。普通の講義では、質問するためには大人数の前で教授に聞きに行く必要があるので、一定のコミュニケーション能力がないと難しいと感じます。
しかし、チャットでのやり取りの場合そういった能力は必要ありません。他の学生が見られない一対一のチャットでも会話ができるので、
直接質問するより敷居が低くなったように感じます」
思っていた以上にオンライン授業は広範囲にわたってメリットがあるようだ。この他にも、
自分の興味ある授業を簡単に見られるというのも大きなメリットだと言う。
「履修登録システムのサイトからアクセスすることで、一部パスワードがかかったものを除き授業の映像を自由に閲覧したり受講したりすることも出来ます。YouTube で動画を検索するくらいの感覚で聴きたい授業を探せる上に、入退出も自由なので気軽に受講できるところが良いです。このような仕組みは是非とも今後も続けて欲しいです」
もちろん、その大学の学生以外は閲覧できないようになっているようだ。が、この様な履修していない授業にも顔を出す行為は「もぐり」などと呼ばれ、大学生が様々な学問に興味を持つきっかけになってきた。この様な「もぐり」行為をむしろ歓迎する教授は今も昔も少なくない。
このように様々な授業をネットで手軽に受けられる形式は、近年人気を集めているN高等学校や映像授業の予備校のような通信制教育を彷彿とさせる。こうしたパソコンやスマートフォン一つでどこでも受講できるオンライン授業の強みは大きい。
「新型コロナウイルスをきっかけにテレワーク化が進む」とも言われているが、オンライン授業というスタイルも、今回をきっかけに拡大し、今後の教育界を変えていくのかもしれない。
一時は、学生によって通信環境に格差があることが問題となり議論を呼んだ。だが、現在は無料でパソコンやWi-Fiのルーターを貸し出すなどの措置をとる大学が増えている。とはいえ、通信環境の格差は解決される一方で、オンライン授業という形式自体に懸念点はないのだろうか。