この具体的な提案に対する安倍総理の答弁は以下の通り。
安倍首相:「
もう既にある制度においてですね、例えば、え、本来4月から開始をした、高等教育の修学支援新制度ではですね、学生生活の費用をカバーするために十分な、えー、給付型奨学金の支給を、ま、行うこととしておりまして、ま、その際ですね、えー、今般の感染拡大など影響を受けて家計が急変した場合には、それを加味した所得見込みで、え、支援の判定を行うこととしてます。ま、これは生活に対する支援を行うわけでございます。また授業料の納付が困難な学生にはでですね、納付猶予や減免等を行うよう大学等に対して要請を行うとともに、まあ、そうした場合における助成措置を国として、えー、講じることにしております。(
黄信号)
えー、なお、この、えー、これはまあ、あー、今、枝野委員からお話しがあったようにですね、えー、まあ、あのー、経産大臣の経験をされましたから十分ご承知の上だと思いますが持続化給付金については大変厳しい状況に置かれている中小・小規模事業者の皆さんを対象としておりまして、給与所得が減少した、あー、学生はこれには含まれておりませんが、(
赤信号)
しかし、えー、雇用調整助成金についてはですね、学生アルバイト等を含む不定期雇用もその対象としたところでございまして、ぜひ雇用者には、えー、これを活用して頂いて、えー、お願いをしたいとこう思っております。(
黄信号)
また、えー、今般ですね、創設した緊急小口資金の特例等ではですね、収入減少などにより返済が困難となった場合には、それを免除する仕組みを導入しておりまして、えー、こうした、あー、特例等も、え、活用して頂くことが可能となって、えー、おります。(
黄信号)
政府としてはこうした取り組みを通じてですね、えー、学生が経済的困窮を理由に大学等での修学を断念することがないようにしっかりと支援をしていきたいと、先ほど最初にお話を伝えたようにですね、えー、自分で自立して、なんとか家庭の経済支援を得られない中においてもですね、しっかり、えー、大学に通い、そして、えー、その大学を卒業できるように支援していきたいとこのように考えております。(
青信号)」
枝野代表:「
大変残念なお答えです。先ほど申しましたとおり、雇用調整助成金で給与手当を受けられている学生さんもいるかもしれませんが、残念ながら、そうじゃない状況でもうアルバイトが入らない。そういう声が現実にあるから申し上げてるんです。そして先ほど申した通り、親御さんが全面的に協力をしてくれて、親の収入が減っていて、そうした状況の中で最初におっしゃった支援金、奨学金が受け取れる方もいるでしょう。だけども例えば親から完全に自立して、そういう状況ではその対象にならなかったり、その協力を親から得られない。でも、そういう子って一番頑張って支えなきゃいけない子じゃないですか」
見ての通り、
枝野代表の持続化給付金の拡大解釈による学生救済という具体的提言に対して、安倍総理はほとんど回答していない。
既存制度の再説明が大半を占めている。
まず、1段落目、3段落目、4段落目は質問に関係する背景や経緯であり、
黄信号
と判定した。
1段落目:高等教育の修学支援新制度の再説明
3段落目:雇用調整助成金の再説明
4段落目:緊急小口資金の再説明
高等教育の修学支援新制度は書類提出などに親の協力が必要であり、親から自立している学生の支援にはならない。雇用調整助成金はアルバイト学生に必ずしも渡るものではなく、救済としては不十分だ。そもそも、
これらの既存制度では救えない学生がいることは直前の質問時に枝野代表が3分間もかけて学生たちの生の声も交えて説明したばかりだが、残念ながら安倍総理の耳には入っていなかった。また、緊急小口資金は条件付きで返済免除の特例があるとは言え、借金であることには変わりはない。
2段落目も既存制度の説明であることは同じだが、質問内容である持続化給付金について微妙に論点をすり替えており、
赤信号とした。
2段落目
【質問】持続化給付金の
対象拡大
↓ すり替え
【回答】持続化給付金の
現在の対象
枝野代表は持続化給付金の現在の対象に学生が含まれていないことは百も承知の上で、その対象範囲を学生に広げることを提案しているわけで、
この回答は時間の無駄でしかない。
そして最後の5段落目、
救済されないケースの学生も存在する既存制度を通して、学生が大学を卒業できるようにしっかり支援していきたいという空虚な内容で答弁を締めくくっている。これは、持続化給付金の拡大解釈による学生の救済という提言に対して、間接的に「No」と答えていると考えられるため、回答(
青信号)と判定した。
結局、既存制度では支援を受けられない具体的なケースを示して学生の困窮を説明しても総理は理解を示されず、その具体的な解決策を提案してもほとんど回答すら無かった。
翌29日も参議院 予算委員会で立憲民主党・蓮舫議員が持続化給付金の解釈拡大による学生救済を提案したが、安倍総理は前日と同様に既存制度の説明に終始し、提案を受け入れることはなかった。
<文・図版作成/犬飼淳>