コロナの影響を受け一部の大学は学生に補償を…その裏で広がっていた大学生たちの署名活動

困窮する大学生に一部の大学が動きを見せた

明治学院大学

明治学院大学

 新型コロナウイルスの感染拡大による大学生の困窮は、とりわけ著しいものだ。家族の収入減やアルバイトの消滅は、学生の懐事情を直撃する。マスコミ各社が報じた「13人に1人が退学を検討している」とした学生団体の調査は大きな衝撃を与えた。  そして何より、大学生にとって大きな負担なのは大学の学費だ。ここ半世紀で、物価上昇は2倍程度であるのに対して大学の学費は国立で約15倍、私立で約5倍にも増加している。2018年の授業料標準額は国立大で約50万円、私立大で90万円だ。しかし、現状多くの大学では例年通りの学費負担を求められている。学生である筆者の周りでも、図書館など施設が閉鎖されているため図書代がかさむ、理系の実験までオンライン授業になったため設備を使用した充分な指導を受けられない……と言った声も多い。  その中で、ようやく一部の大学が特例措置を取り始めた。明治学院大学は21日、「在学生全員に5万円支給」「特別奨学金による救済措置」「春学期学費の納入期限延長」を発表した。続いて早稲田大学、慶應義塾大学などの有名大学も次々と支援策を発表した。芝浦工業大学など、学生がオンライン講義を受ける環境を整えるため、臨時奨学金を給付する動きも出てきている。  このような大学の動きの背後には学費減額を求めた署名活動がかつてない規模で拡大したという事情がある。

SNS上で拡大した学費減額運動

 4月4日に青山学院大学の学生が署名活動を始めたのを皮切りに、SNS上では大学生による大学の学費減額を求める署名活動が活発になっている。その要求は多くの学生の支持を集め、各大学に急速に波及。100以上の大学で署名活動が行われ、1000筆超の署名を集めたものも多い。  18日から学生が署名を始め、23日までに1000筆超が集まった獨協大学では24日に一律10万円を学生に給付することを決めた。背景にはインターネット署名サービス「change.org」が普及してきており、インターネット上で署名を集めるという行為が若年層などに浸透してきているという事情もあるだろう。  その多くは大学に向けて、「新型コロナウイルスの感染拡大で休講、校内立ち入り禁止、オンライン措置が行われているにも関わらず学費は満額請求されている。そのため、学費の一部減額・返金を求める」という趣旨のものだ。  学費減額署名の主催者である知人は、活動のきっかけを「今回の事態で通常通り学費を支払わなければならない事に疑問を抱き、大学に問い合わせてみました。すると、学費減額は毛頭考えておらず、それについての説明をする必要も感じていない、との回答でした。そこで、個人として学費減額ないし説明を求める署名活動を行うことにした」と語る。  また、活動を行う中で、日本の大学生たちがここまで声を上げる性格だったことに驚いたそうだ。「活動の中で教職員などからの批判も含めて多くの意見をもらいました。若者には、若くて粗野な行動が出来るということに最も意味があります。どんどん気になることには声を上げて、敵味方ではなくフェアな議論になれれば嬉しいです」と話してくれた。  この署名の広がりは賛否を問わず、これまで関心の薄かった教職員や学生が大学について考えるきっかけにもなっている。学生が声を上げることには、それだけで大きな意味があると感じさせる。  否定的な意見のなかには、大学のサービス性低下を焦点としたこの様な要求は、大学のサービス化や商業施設化を肯定してしまっているのではないかというものもある。大学の存在意義を問い直す議論であり、大学生が最も大切にすべきだが、普段は取り上げられることの少ないテーマだろう。
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本当に動くべきは大学ではなく国
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