医療崩壊状態の「墨東病院」(墨田区)
冒頭の『日経新聞』が報じた墨東病院についても、医療関係者の情報提供をもとに3月30日の臨時会見で以下のような声掛け質問をした。
「知事の怠慢で、墨東病院は(一時的な緊急)外来中止になったのではないですか。『(緊急外来を)対策なしで開けろ』と言ったのですか。なぜ軽症者を転院させないのですか」
この時は、医療関係者の情報提供を受けて現地確認をした後に質問をした。第一種感染症指定医療機関である「墨東病院」(墨田区)を3月29日夜に訪れると
「緊急外来中止」の告知文書が一時的に貼られた後、すぐに剥がされたことが確認できた。医療関係者はこう解説した。
「
墨東病院は感染者受け入れによってキャパオーバー寸前で、本日緊急外来を一時中止するとの告知文書を貼りました。するとすぐに都が撤回を指示して、貼り紙が剥がされたのです。医療崩壊寸前の状況を隠蔽したとも言えますが、軽症者転院などの対策を打ったわけではなかった」
3月29日夜に墨東病院に貼り出された緊急外来中止の告知文書。都の指示ですぐに剥がされ、「キャパオーバー寸前」という病院側のSOSが無視された
多くの感染者を受入れてきた墨東病院が出したSOS(緊急外来中止)に対して、都は有効な対策を打たないまま、“不都合な真実”を隠蔽するだけだったといえる。
しかも墨東病院では医療用マスク不足が深刻化し、3月2日の参院予算委員会で福山哲郎幹事長がこのことを取り上げてもいた。
院内感染防止に不可欠な医療資材の確保に対して、都や国が迅速な対応をしなかったことも、同病院の医療崩壊や院内感染を招いた大きな原因であることは間違いない。
ところが、「安全と信頼の医療を実現する都立病院改革」に取り組んでいるという東京都病院経営本部は「都立病院における医療用マスクの状況について」と題して「
都立病院においては、現在、診察に必要な医療用マスクを確保しています。今後とも、安全・安心の医療を提供してまいりますので、都民の皆様におかれましては、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます」と、まるで問題がないかのような告知をしていたのだ。
会見は頻繁に開かれているが、筆者の“排除”は3か月以上続いている
都の経済支援策に関する有識者発言をもとに声掛け質問をしたこともあった。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は4月4日の「NHKスペシャル」で、英国の手厚い経済支援策について次のように語っていた。
「緊急事態宣言がもし出ますと、いま自主的判断に任されている飲食店の営業を強制的に休んでもらうことが想定されると思うが、そうなってくると補償、安心して休めるのかが大切だと思う。イギリスで飲食店を営業している友達が2週間前から休業をしているが、
先日、政府から300万円くらい政府から振り込まれた。従業員の給与も次の3か月は8割も補償されている。法人税は1年間払わなくてもいい」
しかし4月10日に小池氏が説明した「(感染拡大防止)協力金」は50万円だった。そこで筆者は、日英比較についての声かけ質問をした。
「知事、(感染拡大防止)協力金50万円というのは、少なすぎるのではないですか。イギリスは300万円ですよ。こんな額では、店を閉められないのではないですか。もっと手厚い休業補償、安倍総理に求めなかったのですか。怠慢ではないですか?」
この直後の10日15時に配信された『デイリースポーツ』の記事は、
「小池知事会見 大声野次にネット騒然」と題して、筆者の質問内容とともにネット上の否定的なコメントを次のように紹介した。
「(声掛けをした)この場面にネットは騒然とし、『誰?』『記者なの?』『不快』『感じ悪い』『気持ちをざらっとさせられますよね』『悲しくなった』との投稿が相次いだ」
筆者のような気に入らない記者は指名しない“記者排除”が3か月以上続いていることや、前述の山中氏の発言を知らない人には、不快な野次にしか聞こえなかったのだろう。
筆者の質問の意図は
「イギリスのような手厚い支援策を打ち出して飲食店などの事業者が安心して店を閉められるようにすべきだ。そうしないと、日銭で営業している店が一斉に休業に踏み切れず、感染拡大防止の実効性が薄れてしまう」というものだ。
ちなみに安倍首相が発表した布マスク全世帯配布の費用は466億円もかかるが、「これほど巨費を使うのなら補償に回したほうが有効」とも思っている。
会見を頻繁に開き、CMにも登場しまくる小池知事は“やっている感”の演出は得意だ。しかし、手厚い経済支援策の実現や医療崩壊回避対策の具体化などの成果は乏しい。“口先”対応は得意だが、中身はスカスカのように見える小池氏へ、筆者が声掛け質問を続けるのはこのためなのだ。
<文・写真/横田一>