国民がコロナ禍で苦しむ中、火事場泥棒的に保身のための法案成立を急ぐ安倍政権。検察庁法改正案の問題点とは?

衆院インターネット審議中継より

2月13日の衆院本会議で高井たかし議員の質問に答える安倍総理だが、この箇所の議事録はなぜか衆議院のサイトにアップされていない。
画像は衆院インターネット審議中継より

 4月16日、検察官にも定年後の勤務延長を認める等の内容を盛り込んだ検察庁法改正案が衆議院にて審議入りした。本稿では、この改正案の問題について指摘する。

ことの発端

 ことの発端は今年の1月31日、東京高等検察庁検事長黒川弘務氏について、「管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に引き続き対応させるため,国家公務員法の規定に基づき,6か月勤務延長する」という閣議決定がされたことである。〈参照:閣議及び閣僚懇談会議事録 pp.2〉    検察庁法22条により、検察のトップである検事総長は65歳、それ以外の検察官は63歳で定年退官することになっている。黒川氏は今年の2月8日が63歳の誕生日のため、同日をもって定年退官するはずであった。しかし、この閣議決定によって、8月まで勤務が延長されたのである。  この延長は、黒川氏を検事総長に就かせるためのものはないか、と言われている。現在の検事総長は稲田信夫氏だが、検事総長は最長でも2年で退任するのが通例であり、稲田氏は今年の7月25日に在任2年を迎える。つまり、黒川氏の勤務を延長すれば、稲田氏の予想退任日においてまだ現役検察官であるため、黒川氏を検事総長に指名するのが可能になる。  なお、検事総長の任命は、内閣が行い、天皇が認証することになっているが(検察庁法15条)、実際には、検事総長が次の検事総長を指名し、それを内閣が追認することが慣例になっている。検察は権力の不正をチェックする役割を担っているため、政治からの「独立性」「中立性」が必要である。だから、検事総長の人事についてもこのような慣例が存在するものと言える。  そして、検察内部では、黒川氏と同期の林真琴名古屋高等検察庁検事長を次期総長にすることが規定路線だったようである。林氏の63歳の誕生日は今年の7月30日であるから、稲田氏の想定退任日においてまだギリギリ現役検察官である。だから検事総長に指名することができる。黒川氏の勤務延長という裏技が無ければ、確実に林氏が次期検事総長になっていたと言える。

国家公務員法の規定

 閣議決定において、黒川氏の勤務延長の根拠とされた「国家公務員法の規定」というのは、具体的に言うと、国家公務員法81条の3第1項のことである。非常に重要な条文なので、同条2項も含めてそのまま引用する。
“第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。 ○2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。”
要約すると、こうなる。 ①「退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」は、最大1年延長できる。 ②この理由が引き続き存在するときは、延長を繰り返せる。 ③延長を繰り返しても、定年退職日から3年が限界。  つまり、最大3年勤務延長できるという規定である。そして、延長の理由となる「退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」は、人事院によると、下記のとおりである。 ●定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合 ●定年退職予定者が離島その他のへき地官署等に勤務しているため、その者の退職による欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な支障が生ずる場合 ●定年退職予定者が大型研究プロジェクトチームの主要な構成員であるため、その者の退職により当該研究の完成が著しく遅延するなどの重大な障害が生ずる場合  そして、政府は今回の勤務延長の理由について、要約すると「東京高等検察庁菅内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するためには、黒川氏の豊富な経験・知識に基づく指揮監督が必要不可欠」と言っている。山中理司弁護士がツイッターにて勤務延長に関する閣議書を公開しているので引用する。  しかし、この理由が人事院の挙げている具体例と同じレベルに無いことは明らかである。「重大かつ複雑困難事件」が具体的に何を指しているのかも分からない。そして、どんな事件であろうと、捜査・公判は現場の検事が担当しているのだから、検事長が変わって支障が出るはずがない。そもそも今まで一度も議論すらされなかったこと自体、検事長の勤務延長が不要であることを示している。  このように、「根拠としている法律の要件を満たしていない」という問題もあるが、その前に、「そもそもこの国家公務員法の勤務延長規定を検察官に適用できるのか」という問題があった。
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違法な安倍政権による「解釈変更」
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