4月7日、政府は東京、神奈川、埼玉など7つの都府県に緊急事態宣言を発出した。これを受け、東京と大阪にあるネットカフェ「バグース」をはじめ、「DiCE」「自遊空間」など臨時休業を発表した施設も多い。これにより居場所を失うと言われているのが、ネカフェ難民だ。「東京都にいる4000人のネカフェ難民が行き場を失い、路上へ放り出される」と話すのは、ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏。
「基本的にホームレスは路上だけで生活している人より、路上と簡易宿泊所を行き来している人のほうが多い。ネカフェ難民の正確な数字は調査されていないが、全国で見たら最低でも東京都の10倍、4万人以上はいてもおかしくない」
藤田孝典氏
ホームレスでも受けられる政府の支援制度はある。主なものは、生活保護、生活困窮者自立支援、生活福祉資金貸付制度、住居確保給付金の4つだ。これらについて自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連氏は、「以前は審査基準が厳しかったが、コロナ対策で少しずつ緩和が進んでいる制度もあります」と話す。
「例えば、『住居確保給付金』は、コロナ感染拡大の影響を受けて3か月から9か月まで補償を拡大した。これは申請が通れば、一度で終わる30万円の給付金より継続して家賃補助をしてくれる。でも、そういう情報すら知らない人たちがほとんどです。支援団体を頼ってもらえばお手伝いできますが、本当に必要な人に届いているのかどうかは難しいところです」
大西 連氏
海外に目を向けると、イギリス・ロンドン市ではホテル300室を借り上げて路上生活者を保護したり、アメリカ・カリフォルニア州はキャンピングカー110台を隔離場所にするなど対応が早い。それに比べて、日本の対応はなぜこうも遅いのか。
「欧米だと基本的に居住権の保障が最優先で、住宅を失うと生活が破綻するという考えです。だから緊急事態になったら、ホームレスを保護しながら支援していくという政策が自然にとれる。しかし日本では、家賃が払えなくなったら退去させられるのが当然という考え方。しかも一度路上に出てしまうと住宅の契約すら難しくなってしまう。国民のホームレス支援への関心も低いですし、後回しにされているのが現状です」(藤田氏)
そんななか、東京都は4月6日に補正予算の12億円を計上して、住居を失った人への一時住宅提供(500室)を発表。しかし、「まったく足りない」とは大西氏。
「東京都は路上に1000人とネカフェ難民が4000人いるので、まったく受け皿になっていないですよ。しかも新型コロナの影響で失業したり減収した人への特別措置なので、まずはそれを証明しないといけない。そもそもコロナが流行する前からホームレス生活だった場合は対象にすらなりません」
彼らを保護せずに放置すれば、「いつクラスター化してもおかしくない」と藤田氏は警鐘を鳴らす。
「ずっと路上にいるならまだしも、炊き出しや無料の宿泊所に行けば、他者と濃厚接触する機会は必ずありますよね。彼らも生きるためには食料や寝床を求めて動いていくので、一方的に居場所を奪うだけではなんの解決にもならないです」
今後はコロナ失業も加わって、ホームレスの数が急増していく可能性は大きい。そうなれば、感染リスクが街中に溢れることになる。奪われる命はもはや計り知れない。