コロナ離婚やDVを未然に防ぐ、倦怠期夫婦もの映画7選

6:『来る』(2018)

来る 正体が不明瞭なバケモノとの霊能力バトルが展開する、エンターテインメント性の高い日本のホラー映画だ。もちろん現実ではあり得ないことが起こるのだが、実は子供および家族との向き合い方を“寓話”として学べる内容にもなっている。  なぜなら、劇中で化け物に狙われる夫は、表面上は2歳の娘を持つ“完璧”な父親像を取り繕っていて、ブログにも理想化された自分の姿を嬉々として書き綴っているのだが、彼の本質はとんでもなく無責任で自己中心的、ほぼほぼ育児を妻に任せっきりなばかりか、無神経なセリフも平然と言い放つという、観ているだけでぶん殴りたくなるほどにムカつく最低野郎なのだ。もちろん極端にデフォルメしたキャラクターではあるが、大なり小なり彼の行動に「自分にも思い当たる節がある」と思う方もいることだろう。幸せなはずの結婚式の時点で、すでに地獄の夫婦生活の片鱗が見えている、木村カエラの有名楽曲『Butterfly』が禍々しいものにしか聞こえないという演出も実に意地悪だ(褒めてる)。  そして、「血の繋がった親だけが子供にとって絶対的な価値観となる危うさ」や「他の誰かが子育てにコミットすればみんなが助かるかもしれない」ということも描かれている。劇中の霊能力者の女性と、オカルトライターの男はどちらも“子供を作ることができない”身体であり、自分の子供を産めないことに劣等感や疎外感を感じていたりもするのだが、彼らは身を呈してバケモノから子供を救おうと奮闘し、日常的に子育てにも関わっていく。その姿から、今の閉塞的な世の中でも、古くからの友人や新しく関わることになった人に(もちろん感染には気をつけなければいけないが)、子育てを手伝ってもらう、というのも良い選択肢であると気づけるのかもしれない。

7:『ぐるりのこと。』(2008)

ぐるりのこと 生活力のないだらしない夫と、小さな出版社で働いていた妻の10年間の日々を綴った作品だ。2人は授った新しい命に希望を膨らませていたが、その子供は非情にも亡くなってしまう。その悲劇に積み重なるように、妻の“しっかりしすぎていた”性格、そして日々の小さな出来事の積み重ねが、彼女を精神的に追い詰めていたことも次第にわかるようになっていく。  その子供を亡くしてしまう決定的なシーンは映し出されないのだが、カレンダーに書かれていたはずの夫婦の営みの予定を示す「×」の印が消えていること、寝室の隅に位牌と飴玉が置かれていれている、といった描写で静かにその事実を示している。その後は心をさらに病んでいく妻の姿を映し出していくことになるのだが、表面的にはダメダメに見えても確かに感じられる夫の妻への愛情、その関係が10年という時間をかけて、一歩ずつより良くなっていくことに、希望を感じられるだろう。そのため、反面教師というよりも、半ば理想的な夫婦関係を描いている作品とも言える。  重要なのは、夫が法廷画家として働くシーンを通じて、1990年代に起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件、地下鉄サリン事件といった、社会を恐怖に陥れた凶悪な事件を振り返っていることだ。犯人が法廷で口にする言葉は時におぞましく、その事件が本当に起こったという事実に改めて打ちのめされてしまう。しかし、そのような悪意を持つ人間がいる、最悪と言える事件が起こりうる世の中でも、人はなんとか生きることをがんばっていく、ということも、夫婦の日常を通して淡々と示されていく。その姿は、今の世の中でも「生きている」ことを肯定するものとして、美しく尊く見えるはずだ。

おまけ:逆に最も夫婦が観ていてはいけない映画とは

 ここでは反面教師的に“夫婦のあり方”について学べる7つの映画を紹介したが、『レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで』と同等かそれ以上に毒性も地獄度も強く、「夫婦は絶対に観てはいけない!」と警告してしまいたくなる映画も存在している。それは『ゴーン・ガール』(2012)だ。  5回目の結婚記念日の朝に失踪した妻の消息を辿るミステリーであり、謎が謎を呼ぶ展開が満載、ネタバレ厳禁のサプライズもあるため、なるべく予備知識なく観たほうがいいだろう。夫婦の信頼関係の崩壊、マスコミの過激な報道、そして大局的な人生観も見据えた、多角的な視点が交錯している傑作ではあるのだが……ラストに、夫婦にとって本当に最悪(褒めてる)と言える、凄まじい“真実”が提示されるのである。  逆に言えば、この真実を知ってもなおも円満な夫婦関係を築けるのであれば、コロナ離婚など起こりようもない、素晴らしい夫婦であることを証明できる、とも個人的には思う。その覚悟で、パートナーと一緒に『ゴーン・ガール』を観るというチャレンジをしてみるのもいいだろう。決して、オススメはできないが……。 <文/ヒナタカ>
インディーズ映画や4DX上映やマンガの実写映画化作品などを応援している雑食系映画ライター。過去には“シネマズPLUS”で、現在は“ねとらぼ”や“CHINTAI”で映画記事を執筆。“カゲヒナタの映画レビューブログ”も運営中。『君の名は。』や『ハウルの動く城』などの解説記事が検索上位にあることが数少ない自慢。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」 Twitter:@HinatakaJeF
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