中国のバイオテク企業
カンシノ・バイオロジクス(CanSino Biological)も、3月16日にワクチンの第1相臨床試験を開始しています。同社は、2017年にエボラウイルスワクチンの製造を支援したことで有名です。このワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子を運ぶ「ベクター」として、アデノウイルス5(Ad5)を使用しています。中国の治験登録簿によると、武漢で108人の参加者を登録し、3つの用量強度を投与して、6ヶ月後に結果を判定する予定です。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団が支援するイノビオ・ファーマシューティカルズのINO-4800
ペンシルバニア州プリマスミーティングに本社を置くバイオテク企業
イノビオ社(Inovio Pharmaceuticals)は、4月6日、米国では2番目にヒトへのDNAベースのワクチンINO-4800の第1相臨床試験を始めました。
臨床試験では、ペンシルベニア大学医学部とミズーリ州カンザスシティの医薬品研究センターにて、健康な成人ボランティアを最大40人登録しています。各ボランティアは、4週間おきにワクチンを2回打ち、免疫応答と安全性を今夏の終わりまでに確認する予定です。その後、第2相臨床試験をできる限り迅速に進める計画。また、イノビオは、生産能力を拡大しており、2020年末までに100万回の投与が可能になることを目指し、追加の臨床試験や緊急事態に使用できるように準備しています。
今後、次々とワクチンの臨床試験が始まるでしょう。新型コロナウイルスとの戦いは長期戦です。少なくとも1年〜1年半後に、有効で安全なワクチンが世界中の人が利用できて、元の生活に戻れることを期待します。
<文/大西睦子>
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。