ビデオ会議の壁紙、さまざまな企業が続々提供開始。急速に流行する文化

アニメや映画会社も続々参入!

 バーチャル背景を提供しているのは、ゲーム会社だけでない。アニメーションや映画の会社も、この流れに乗っている。Marvel Entertainment や、Walt Disney Studios、20th Century Studios といった会社のバーチャル背景が、ネットでも話題になっていた。  日本のコンテンツだと、エヴァンゲリオン公式が、バーチャル背景を提供している。スレッドには、いくつかの種類が投下されており、作品の雰囲気から怪しい秘密会議のようになるのが面白い。  その他、ネットでは大喜利のようになっており、「電波少年」や「例のプール」、「ソフマップ」など、いかに面白いバーチャル背景を選ぶか、頭をひねっている人たちが出ている(Togetter)。

個人が商品の広告塔になる

 さて、こうしたバーチャル背景の提供は、過去と比べて珍しいものではない。商品の画像をノベルティとして提供する行為は、昔からおこなわれている。スマートフォンの壁紙やロック画面。パソコンの壁紙やスクリーンセーバーなどが、それらに当たる。  有償のものもあれば、無償のものもある。会員へのポイント特典などで配布されることもある。たとえば、Nintendo Switch では、もらえるポイントを使って、各種ゲームのパソコンやスマートフォン向けの壁紙をもらうことが可能だ(参照:マイニンテンドー)。  こうした画像の提供は、おもに利用者への宣伝や販促を目的としている。そうした画像と、ビデオ会議の背景では、宣伝対象が少し異なっている。バーチャル背景は、選択した人だけでなく、その人物とビデオ会議をおこなっている人たち全員に提示される。宣伝の対象が、内向きではなく外向きなのだ。  また会議の冒頭で、バーチャル背景が話題になり盛り上がることも多い。これは商品の宣伝としては非常に強力だ。ユーザーが自身の言葉で、コンテンツについて語ってくれる。個人が商品の広告塔になってくれるわけだ。  バーチャル背景は、個人の満足で終わるのではなく、バイラルに広がる可能性を持っている。他人の背景を見て、面白いと思った人が、自分もその背景にして感染していくこともあるからだ。  ビデオ会議の頻度が増えれば増えるほど、広告効果は増していく。そしてコストは非常に低い。画像を1枚提供すればよいだけだからだ。そのため、フットワークの軽い会社は、自社の商品のバーチャル背景を積極的に提供している。  ビデオ会議がメディアになれば、それ自体が広告媒体として機能し始める。まだ、各社は流行に乗って画像を出しているだけだが、効果を考えながら展開していくところも出てくるだろう。  たとえば資金力があり、広告をおこないたい会社が、こうしたバーチャル背景を、ビデオ会議ソフトに同梱してもらうということもあるだろう。パソコンのバンドルソフトのような商売だ。これは、ソフトウェアを提供する会社側にもメリットがある。提携先によっては、ソフトは話題になり認知度が向上するからだ。  それだけではない。バーチャル背景まとめサイトや、検索サイト、投稿サイトなど、数々の周辺サービスが生まれていくことも考えられる。そうした状況になれば、背景を変えられないビデオ会議システムも、基本機能として実装していくだろう。実際に、Microsoft Teams も対応するようになった。ビデオ会議の流行は、周辺を巻き込んで、新しい文化を育てていく可能性を持っている。ビデオ会議の流行は、周辺を巻き込んで、新しい文化を育てていく可能性を持っている。
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さまざまな「変化」が起きるかもしれない
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