緊急事態宣言で休業でもコロナ対策融資すら受けられないパチンコ業界。根底にある職業差別

パチンコ店

photo / PIXTA

緊急事態宣言を受けて大手ホールも臨時休業を決定

 4月8日0時に緊急事態宣言が発布された。これにより日本国は、新型コロナウイルスとの戦いのステージを上げ、政府に指定された地域では、1カ月間に及ぶ未曾有の総籠城戦を始めることになった。  指定された地域の知事たちが相次いで自粛要請業種を発表するなか、世論からの批判が強かった「パチンコ」も、自粛を要請される側となった。このような政治の動向を受け、業界最大店舗数を誇るダイナムを始め、マルハンやキコーナ、123やユーコーラッキー、ガイア、日拓エスパス等、大手チェーン企業が緊急事態宣言期間の無期限休業を発表し、それに追随する形で数多くのパチンコホールが休業を発表し始めた。宣言発布当日の8日の朝まででもおよそ1千店舗が臨時休業を行っている。  一方で政府・自治体の要請を真摯に受け止めながらも、閉めるに閉められないパチンコホールも多数存在する。

ほとんどのパチンコ店は中小零細という現実

 新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、政府や自治体が国民に強く求めたものが「3密」と呼ばれる、「密集・密閉・密接」を避けることであった。この状況に該当する業種が具体的に名指しされるなか、「パチンコ」は除外された。パチンコ業界関係者からも、パチンコ店の換気力の高さについての説明がなされ、他の施設と比べとりわけ感染危険度の高い施設では無いという主張が数多くなされたし、3月下旬以降、世間の自粛ムードの高まりと相まって、パチンコ店に来店する客数が一気に減ることにより、多くのパチンコ店では「密接」、「密集」とはとても言い難い状況になったのも事実である。しかしメディアやSNSを通じた「パチンコ」に対する誹謗にも近い批判は絶え間なく続き、4月4日~5日には、東京都内250店舗以上のパチンコ店(都内パチンコ店の約3分の1)が自主的に臨時休業を行う決断を下した。  しかし今回の「緊急事態宣言」は東京都に限った話では無い。全国7都府県にまたがる話であり、今後、指定地域が増える可能性すらもあるのだ。期間も週末2日間という話では無い。業界の繁忙期でもあるGWを含んでの、1カ月以上の休業である。一部の大手チェーン企業を除けば、ほとんどのパチンコ店は中小零細企業である。駅前立地や、郊外であれば駐車場を含む広大な土地を借り、1台40万円~50万円もする遊技機を数百台も設置しなくてはならない。繁盛しているように見えても、内実は自転車操業のようなパチンコ店も少なくはないのだ。  しかし、多くの中小企業や個人事業主がそうであるように、1カ月間に及ぶ休業や世の中の自粛は、死活問題に直結する。そもそも1カ月間絶え凌げないと既に諦めたところも少なくない。一般の飲食店や居酒屋、夜の接待飲食店や、その関連企業は青息吐息である。 「パチンコだけじゃない!みんなたいへんなんだ!」 という声が聞こえてくる。  しかしパチンコ店には、他の一般的な中小企業、個人事業主とはまた違う、パチンコ店ならではの「閉められない事情」があるのだ。
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コロナによる経営悪化の融資策すら受けられないパチンコ店
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