緊急事態宣言で休業でもコロナ対策融資すら受けられないパチンコ業界。根底にある職業差別

コロナによる経営悪化の融資策すら受けられないパチンコ店

 今回、緊急事態宣言の地域に指定された千葉県のとあるパチンコ店経営者が、社会的な課題に対する市井の声を集約し、価値ある発信に変え、キャンペーン化するためのインターネットツール「Change.org」に、パチンコ店のリアルな声をあげ、人々の賛同を募っている。  タイトルは- 「セーフティネットのパチンコ業界に対する職業差別撤廃を求めます!! 営業補償してくれとはいいません。従業員を守るために一般企業と同じように特別融資をうけられるようにしてください!」  下は、この請願の一部の抜粋となる。 “新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言が出る動きになっています。カラオケ、パチンコ店、キャバレーやバーなどの娯楽施設には「特に強く休止を要請する」という情報も流れています。  私はパチンコ店経営者として地域の方々、従業員の命、健康を大事に思っており、この国に住んでいる者として、この国難に協力し、感染拡大を防がなくてはいけないと思っています。  自分の商売から被害者を出したいとなんて思っていません。一緒に働く仲間、多くのパチンコ店経営者の仲間もそう思っています。 (筆者中略)  しかし、今回、コロナウイルス感染拡大により、セーフティネット保証5号の対象となる業種について、3月6日に緊急的に40業種を指定したのに続き、同感染症により重大な影響が生じている業種として、316業種をセーフティネット保証5号の対象として追加指定したのにも関わらず、パチンコ店は対象外としています。 (筆者中略)  地域の方々、お客様の命、健康を守ることと、営業を続け従業員の雇用を守り、従業員の家族の生活を守ることが反比例してしまう現状、これを解決できるのは唯一、政治しかありません。雇用助成金に関してはお蔭様で、東日本大震災の時からぱちんこ営業も対象となり大変助かっております。しかしながら、いくら従業員の助成ができても、本体となる会社が倒れてしまっては、従業員の生活を守り続けることはできません。ぱちんこ営業に関して、色々な意見があり、支援に対し反対意見が出るということは、私も重々承知しております。  決して休業補償をしてくれとは言いません。今回だけでもかまいません。過去にないような全世界規模の危機です。この危機の中での業種差別を無くし、他の企業と同じく特別融資を受けれるようにしてください。 (筆者中略)  憲法16条及び請願法に従い、請願いたします。  日本に住む全ての人が力を合わせ、コロナに打ち勝ち、日本に明るい未来がまた戻ることを望んでおります。” 「セーフティネット保証」とは、中小企業庁が主管する制度で、全国的に経営状況が悪化している業種の中小企業に対して、市町村の認定を受けることで特別枠での融資を受けることが出来るようになる制度である。  この制度にはほとんどの中小企業は含まれるものの、金融・保険、娯楽業の一部や風俗関連事業等は含まれていない。上記請願をしたパチンコ店経営者は、国や自治体の要請に対し、またお客様や市民に対し、果たすべき義務を果たす代わりに、「借金をさせてください」と言っている。  しかしこの制度からは、風営適正化法に含まれる業種は数多く省かれている。風営法許可営業業種のうち、主に飲食を提供する店とマージャンクラブだけが対象となるのだ。ちにみにマージャンクラブは、新型コロナウイルスの感染実績が無かったにも関わらず感染危険度が高い業種だと厚生労働省に名指しされたことで、今回初めて含まれた。

根底にある職業差別

 職業に貴賤がないとするのであれば、まして、管轄する官庁に然るべき申請を行い許可を得たうえで営業をしているのであれば、パチンコ店もこの制度の対象に含まれていいはずである。  これはあくまで筆者の推測に過ぎないが、もし制度に含まない理由が、「資金が反社会勢力に流れる可能性がある」という可能性があるということであるならば、「30万円支給対策」において、当初、厚生労働大臣が接待飲食業や風俗業関連従業者は対象に含まれないと頑なに拒んだ理由も同様でもあるが余りに時代錯誤な話である。  パチンコ店の歴史を振り返れば、少なくないパチンコ店が、反社会勢力、いわゆる暴力団と何らかの関りを持っていた時期もあるが、警察庁とパチンコ業界の徹底した対策を施し、20数年前にはそのような関りを断ち切ったはずだ。この点に関しては、パチンコ業界よりも、取り締まりの主体である警察庁こそが明確に把握している。  最後に。  パチンコ店に対する様々な誹謗や避難があることは、パチンコ業界を取材する筆者は勿論のこと、当の業界関係者もしっかりと把握している。しかしそれはそれ、これはこれだ。  パチンコ店側は、返済不要の休業保証を望んでいる訳ではない。  パチンコ店が、ウイルスの感染源としての危険性があるとするのであれば、せめて、パチンコ店で働く従業員や、その家族のため、せめて1カ月間の休業に応じたパチンコ店には、政府は「セーフティネット保証制度」を適用させるべきではないか。 <取材・文/安達夕>
Twitter:@yuu_adachi
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