2020年3月19日に第4回の「大学入試のあり方に関する検討会議」が開かれました。実は、この会議はもともと2月28日に開催される予定でしたが、新型コロナウィルスの蔓延の影響でこの日まで延期されたのでした。また、いつもは一般の方も傍聴できますが、今回は人々が密集することを避けるため報道関係者のみ会議場での傍聴が許され、その人数は30名程度でした。
なお、第5回の会議は3月31日に予定されていましたが、新型コロナウィルスの感染者が急激に増えたことを受け、延期されました。第5回の会議日程は未定ですが、このペースでは当初予定していたスケジュールよりもかなり遅れてしまうことでしょう。
年内に一定の結論を出すとのことでしたが、時間がないときに文科省がこれまでもよく用いてきた手法-文科省がたたき台を作り、それを委員に認めさせる手法-にならないように多くの人で監視していきたいものです。この記事でも進行状態を逐一伝えていくことにします。
前回に引き続き、委員による持ち回りの発表とそれに対する質疑が行われました。発表した委員は、小林委員(日本私立大学協会)、宍戸委員(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)、両角委員(東京大学)の3名です。以下は、各委員の発表の要旨と質疑応答の概要です。
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小林弘祐委員
私立大学の学生は、全大学生の約75%であるが、私大へのアンケート結果では、センター試験のみで入って来る学生は10%程度である。したがって、共通テストになっても利用する受験生は少ないわけだから、民間試験および記述式の導入の必要性を感じていない。そもそも私大の入試は自主性に委ねられるべきであり、また、共通テストの成績提供の時期が遅れると利用が困難になる。
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小林委員の発言に対する質疑応答
(1)選抜区分ごとの記述式の導入実態はどのようになっているのか。(益戸正樹委員)
⇒AOや推薦でも課しているところはある。全くない場合もある。
(2)センター試験しか受けない学生は、記述式を経ないで大学に入学する。それでよいのか。(吉田晋委員)
⇒私立の大学では、センター試験だけで入る学生の割合は1割以下で少ない。しかも、そのほとんどは記述式のある一般入試を併願しているので、センターしか受けないというのは必ずしも正しくない。したがって、共通テストで記述式を課すことで何かが大きく変わるわけではない。
(3)センター試験だけで判定する入試に受験料を徴収することへのコスト意識はどうか(牧田和樹委員)
⇒受験料は他の大学と比べながら決めている。センター入試の会場となることで教員の負担はかかっている。
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宍戸和成委員
特別支援教育の視点から、高校・大学での教育および大学入試での合理的配慮について、障害のある生徒など多様な個に対して、どのような合理的配慮が提供できるか実情に合わせて検討していくべきである。
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宍戸委員の発言に対する質疑応答
(1)合理的配慮の大学における実情および性的多様性への配慮はどの程度か。(末冨芳委員)
⇒事務局から特別措置が昨年度459校で行われたとの回答があった。
(2)もともと障害者の志願者が少ないためか、社会的配慮が不十分なのではないか。(柴田洋三郎委員)
⇒以前は門前払いのようなことが多かったものの最近はそういうことは少ない。(宍戸和成委員)
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両角亜希子委員
これまでの経緯の検証について、民間試験と記述式がメインとなった背景が未だに理解できない。センター試験は評価が高く、むしろ入試の負荷の大きさが課題であった。大学の多様さも無視できないことと、入試を変えなくても大学教育は変わっているので、高校教育も変わりつつある。英語4技能も記述式も一律に共通テストで求めるのではなく、大学が重視する度合いに応じてそれぞれが導入すればよい。入試に期待しすぎないことが大切であり、必要ならば大学入学後に教育するという考え方もある。
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両角委員の発言に対する質疑応答
(1)両角委員の指摘にとても共感した。(島田康行委員)
(2)入試に期待しすぎないというのはその通りだ。ただ、高校教育は大学入試の影響を全く受けないわけではないが、いわゆる進学校の方が以前から学習していることなので入試が変わっても準備の必要がなくむしろ影響を受けない。(荒瀬克己委員)