新型コロナを巡る「世代間闘争」の不毛さ。問われる「利他的行動」

“無責任な傍観者”に外出する若者を非難する資格はない

新型コロナウイルス感染拡大に無自覚・無責任な若者を非難する人は風疹の抗体検査や予防接種を受けているのだろうか。特に前述の風疹予防接種“谷間の世代”の男性はどうか。もし仮にこの世代の男性が風疹の抗体検査やワクチン接種も受けずに、新型コロナウイルス禍の中で外出を続ける若者を非難しているとしたら、その齟齬には首を傾げざるを得ない。  風疹ウイルスの媒介リスクがあるのはこの“谷間の世代”だけでない。その下の世代、現在32歳から41歳の男性(1979年4月2日~1987年10月1日生まれ)も風疹ワクチン接種率が低く、同世代の女性を含め接種自体も一度だったため抗体が下がっている可能性がある。さらにその下の世代である現在20歳から30,31歳の世代(1987年10月2日~1990年4月1日)の男女は幼児期に接種しているがやはり接種は一回のため抗体が下がっている可能性もある。また4月1日現在58歳以上の世代は定期接種前のため、その多くが自然感染し免疫を得ていると見られるが全員に免疫があるとは言えない。要は各世代で確認が必要ということだ。  大きな企業の中には風疹を含む代表的な感染症の集団接種を行っているところもある。そのような”恩恵”を受けられない人であっても風疹クーポン券を受け取っているなら、この期間限定の制度を活用しない手はない。

集団免疫と「利他的行動」の重要性

 新型コロナウイルス拡大阻止と風疹クーポン券に共通するキーワードが「利他的行動」だ。  風疹無料クーポン券を受け取ったにも関わらず抗体検査すら受けない人がまだ多くいるという現状。時間的な余裕がないなどの理由のほかにそもそもの周知の少なさや重大性の認識不足等様々な要因があると思われるが、キーポイントはどうすれば人は利他的な行動を積極的に取るのかということだ。  ワクチン接種をリスクとベネフィットの関係から自己選択の問題と見る向きもある。その側面は否定しないが、こと風疹に関しては社会の一員として、集団免疫を維持し妊娠中の女性や胎児を護るためにも積極的に抗体検査やワクチン接種を受けるべきだ。 風疹ワクチンの接種や抗体検査推進については当事者グループの『風疹をなくそうの会/hand in hand』やCRSの当事者である風見サクラコ氏(Twitter ID:@withCRS)が貴重な発信を続けている。
『風疹をなくそうの会/hand in hand』と風見サクラコ氏のHP

『風疹をなくそうの会/hand in hand』と風見サクラコ氏のHP

一人から他者に感染させてしまう人数を「基本再生産数」と呼ぶが、この基本再生産数から集団内で感染症を封じ込めることのできる集団免疫の獲得率・集団免疫閾値(集団免疫獲得のために達成すべき集団内の抗体保有者の割合)を代表的な感染症で見ていこう。  新型コロナウイルス感染症に近いと想定されるインフルエンザで67%、風疹では85%、感染力が非常に高い麻疹においては94%必要とされる。  新型コロナウイルス禍についても前述のように、感染拡大のスピードを抑え医療体制の崩壊を招かないようコントロールし、治療薬とワクチンの開発を進めながら抗体を持つ人を増やして集団免疫を形成するという長期戦の様相となっている。ワクチンが開発され接種した人や罹患して回復し抗体を持つ人が増えれば集団免疫によって感染の拡大化を封じ込めることができ、収束に向かうと見られているからだ。また、たとえワクチンが開発されても先天的にワクチンを接種できない人がいるため、そのような人々も集団免疫で護る必要がある。

如何にして「利他的行動」を取るか

自己の選択一つで他者を護ることにも、また逆に他者を危険に晒すことにもなる。先天性風疹症候群、そして今回の新型コロナウイルス禍によって「利他的行動」の重要性が改めて提示された。我々に問われているのは社会の一員としての理性的な判断だ。 <取材・文/鈴木エイト(ジャーナリスト)>
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教カルトと政治というテーマのほかにカルトの2世問題や反ワクチン問題を取材しイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『日本を壊した安倍政権』(扶桑社)
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