新型コロナウイルスを機に実用化した最新テクノロジー
<中国>
●無人配送ロボット……武漢や北京など都市部ではEC大手・JD(京東)やバイドゥが無人配送ロボットを多数投入。医療施設への物資の配送が主なタスクとなり、武漢第九医院のケースでは一日の配送量のうち50~70%を担当したという。また北京ではギョーザの無人配送車も登場
●ライブコマース……小売店への客足が減少するなか活躍しているのがライブコマース(生配信販売)。上海のデパート「新世界城」は、TikTokでライブによる販売動画を38時間にわたって配信。3万人以上が視聴し、この総売り上げは店舗における前週末の10倍に達したという
●無人レストラン……中国各地で配膳ロボットを使ったレストランの無人化と非接触化が進む。武漢では、人が材料を事前に準備しておけば15分以内に36人分の料理を調理するロボットも登場。一方、中国で一度廃れた無人コンビニがコロナ禍で復活し、数を増やしているという
●AI裁判……接触や集団感染を防ぐためスマホを利用したAI裁判が採用された。モバイルアプリ、AIアシスタントなどのテクノロジーが活用されている。3月11日までに、中国の30省市、合計1万3629の裁判所がネット生中継による審理を選択し、AI裁判官が法廷業務を補佐
●AI授業 リモートクラス……3月19日、アリババと人民教育出版社が小学校の公式教材をもとにマルチメディア教材を開発。AIを使ってテキストの読み聞かせや宿題の個別指導ができる学習システム「オンライン教室」を公開。スマートスピーカーとも連動しており無料で利用できる
●ウェブ会議 AR機能……アリババやテンセントが相次いでリモート会議ツールを公開。豊富なAR機能が用意された。部屋の雑多な風景が相手側に映らないようにする「ぼかし機能」や、すっぴんを化粧後に、パジャマをスーツ姿にリアルタイムで加工する「動画美容機能」なども
<アメリカ>
●スパコン ウイルス解析……IBM、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、その他企業や大学、国立研究所が「COVID-19 ハイ・パフォーマンス・コンピューティング・コンソーシアム」を結成。16台のスーパーコンピュータで、ウイルス解析およびワクチン開発の時間を大幅に短縮する計画
●AI新薬開発……グーグルの子会社・ディープマインドは、医療用AIでウイルスのタンパク質構造の解析を計画。製薬会社インシリコ・メディシン、バイオスタートアップのヴィル・バイオテクノロジーなども、AIを使った新薬材料候補の選定・治療剤の開発に乗り出している
●ロボット診察……ワシントン州の病院で、遠隔操作型の診療ロボットが初めて感染患者に投入され、活躍したという。一方、ニューヨークでは、感染の可能性を診断してくれる相談ロボットを街頭に配置。タイムズスクエアなどで多くの観光客を”診断”したという
<日本>
●オンライン診療……3月23日、厚生労働省は感染が爆発的に増加した場合、自宅療養している軽症者へのビデオ通話や電話を通じたオンライン診療を保険で特例的に認めると発表。問診や視診断、薬の処方も可能に。”医療利権”が阻んできたオンライン診療が日本でも普及するか
新型コロナウイルスで最新テックが採用されるなか、国家による監視体制も強化されるかもしれない。
すでに中国では街行く人をドローンで遠隔監視し、マスク未着用の通行人を警察官が街頭スピーカーで注意する方式が採用されているのだ。また、IT大手・アリババが開発を進める「健康コード」は、ユーザーが身分証番号を登録すると感染リスクが3段階で表示されるアプリだ。判定は、GPS情報や監視カメラ情報、決済履歴、交通機関利用履歴から行われる。感染リスクが高い場合、オフィスビルや商業施設へ入るのを拒否されるという。
日本や欧米も例外ではない。
「前提として監視を可能にする技術はすでに存在する。問題は、市民社会がそれをどう捉えるか。日本はプライバシーについては厳しい国でしたが、昨今では外出禁止やイベント自粛など、有事の決断と責任を政府や政治家に一任したいという風潮が表れている。人間が主体的かつ道徳的に行動を取ることを選ぶのか、もしくは監視テクノロジーを容認するのか。ターニングポイントになると思います」(前出の河氏)
集団的恐怖は超監視社会の到来を招いてしまうのだろうか!?
<取材・文/SPA!コロナテック取材班 写真/AFP・EPA=時事>
※週刊SPA!3月31日発売号より