商業施設内はゴーストタウンのようになっている
新型コロナウィルス感染症「COVID-19」の影響が日本でも大きくなりつつあるが、同じアジアでも東南アジア圏は3月から各国が強硬な手段で新型ウィルスを封じ込めようと動いている。日々状況が変化しており、日本人から人気の観光国タイもほぼ鎖国の状態だ。
タイでは旧正月の時点(今年は1月25日だった)で新型コロナウィルスの話題が出ており、タイ国内で若干の感染者が出ていた。その時点では感染者は中国人ばかりで、発症したのがたまたまタイだった。
東南アジアは1800年代から中国移民が流入し、現在一般的に知られるタイ料理の中には原型が中国にあるものが多いほど中国の影響が大きい。移民の子孫には現在も中国に暮らす親族との繋がりでビジネスをする世帯も多く、旧正月にはたくさんのタイ人と中国人が行き来する。さらに、近年は中国でタイ旅行がブームになっており、最近は月間で100万人超の中国人が訪れていたほどである。そのため、最初は中国人の発症が多かったものの、2月中旬には新たな感染者があまり出なくなっていた。しかし、そのことでタイ国内に油断が生じた。2月上旬には市内で多く見られたタイ人のマスク姿はだったが、中旬ごろにその数がやや減っていたほどだ。そして、ムエタイなどのイベントで集団感染が起こった。結果、3月からタイ政府も徐々に厳しい対策を取り始めたのである。
入国管理局は通常営業。ただ、検温とマスク着用義務があり、席などもひとつずつ開けて「ソーシャル・ディスタンス」の確保が求められた
3月上旬は警戒する国を経由する便のみ空港での検疫が強化されたが感染の勢いは止まらず、3月22日にはすべての外国人にウィルス感染の陰性証明書がないと入国させないことが決まった。そして、23日にはタイの国境がすべて閉鎖され、
26日からは非常事態宣言が出され、4月末まで基本的に外国人の入国は不可になっている。
また、この非常事態宣言に先駆け、バンコク都や多数の県が飲食店を始め、人が集まる施設、要するに
接客業関連は強制的に営業停止になった。これもバンコク都は当初4月中旬までに期限を区切っていたが、3月28日にそれまでの告示が撤回され、4月末に延長となった。
タイは日本人長期滞在者が日本以外の国や都市で4番目に多い国であると日本の外務省が発表している通り、今もたくさんの日本人が滞在している。そんなタイでの生活はどうなっているのか。
飲食店は座席を片づけ、テイクアウトのみでがんばっていた
タイは先述した通り、3月26日から非常事態宣言下にある。幸いなことに外出禁止令が出ているわけではなく、バンコクや各県がロックダウン(都市封鎖)されているわけでもない。確かに、バンコク都内や各県の県境道路には検問所が置かれ、無目的での移動は困難になっている。しかし、規制されているわけではなく、身分証明書の提示、検温、目的を口頭で説明すれば通ることは可能だ。あくまでも非常事態宣言は各都市や県をロックダウンする権限を国などが持っただけで、実行されているわけではない。ただ、一部の県では夜間外出禁止令などが出ているようだ。
夜遊びも人気のタイではあるが、バーなどはもちろん営業停止だ。そのため、プーケットなどのリゾート地ではいまだにいる外国人観光客や地元民が暇を持て余し、夜間にビーチに集まって酒盛りを始めるなど、タイ政府が意図することと真逆の行動を始めてしまった。そのため、集団感染の恐れから一部の県では夜間外出が禁止になっているという。といったことを書いているうちに、プーケット県は県道路も封鎖し、空路のみでしか入れなくなったようだ。ほぼロックダウンの状況である。このように状況は刻一刻と変化している。
強制休業の上に政府の支援が特にないため、実質的に失業してしまったタイ人も多い。
地方出身者は物価の高い都市部を避け、故郷に帰る者が増えたことで地方でも感染者が増加するという本末転倒な事態にもなっている。
3月下旬からは新規感染者が100人超で毎日増え続けており、29日時点の累計感染者数は前日比143人増の1388人、新規死亡者もひとり増え7人となっている。累計治癒人数も11人増の111人になる。
ここまで書くと、一見タイ国内は大混乱の様子を想像しているかと思うが、戸惑いや不安は高まっているものの、「大混乱」というほどの様相を呈しているわけでもない。というのは、かつて日本でもよく耳にした「ライフライン」に関する部分に問題がないので、タイ人や在住日本人たちは比較的落ち着いた状態ではある。