スーパーの棚は基本的にいつも通りの品揃え
バンコク都を皮切りに始まった飲食店や商業施設の閉鎖はすべてではなく、飲食店はテイクアウトやデリバリー対応は許され、スーパーの食料品売り場、銀行、ドラッグストアなど生活に必要最低限のサービスは例外とされる。そのため、少なくともバンコクはとりあえず問題のない環境下にある。
日本国内で先日起こったようなトイレットペーパーがなくなる事態もなければ、買い占め騒動が起こることもなかった。バンコク都の強制休業告示や非常事態宣言の前日は軽い騒動はあったようだが、実施された両日、筆者がスーパーに足を運ぶと、特に混乱は見られなかった。
とはいえ、食料品で言えば卵がかなり品薄になっている。タイ人も日本人同様によく卵を食べるので、あっという間になくなったようだ。インスタント麺や缶詰も一部が品薄になっている。しかし、人気ブランドだけが売り切れで、元から人気のないインスタント麺などはこの状況でも売れ残っているので、そのあたりにタイ人が切羽詰まっていないことが窺えた。
一部の商品は品薄。とはいえ、人気商品のみで売れない品はこんな状況でも売れない
デリバリー可なので、今、デリバリー・アプリの配達員の需要が高まっている。スマートフォンのアプリから注文でき、わざわざ外に出なくても人気店などの料理が注文できる。スーパーの中で営業しているタピオカ茶店のオーナーは、「一般客は1日にひとりいるかいないか。あとは全部アプリからの注文で、配達員が受け取りに来ます」と言った。バンコクはかねてよりデリバリー・アプリが活用されていて、この状況下でさらに需要が高まったようだ。
過去にも非常事態宣言を経験した人もいて、意外と逞しい在タイ邦人
在住日本人たちもたくましい人たちが多い。タイは政情不安が2006年から続いており、現政権も2014年にクーデターで実権を握った陸軍に関係する、ほぼ軍事政権だ。2010年、2014年に非常事態宣言が、最後のクーデターが起こったときにも軍部から戒厳令が出された。
わずか6年暮らしている人でも非常事態宣言経験が今回2回目になるし、そもそも東南アジアに来て一旗揚げようとしている人たちはみな強い底力を持ち合わせている。特に、営業が厳しくなった飲食店経営者の動きは早かった。
これまでテイクアウトやデリバリーをしたことがなかった飲食店や、そんな業務とは本来無縁だった居酒屋なども生き残りを賭けてデリバリーを始めている。店を守るだけでなく、従業員の生活を守るためにも必死なのだ。独自に配達を行う店もあれば、先のデリバリー・アプリに登録する店もある。
ただ、バンコクではまだあまり多くないが、同じように強制休業させられているベトナムでは日本人経営店が高騰している家賃が払えず、廃業に追い込まれているという。バンコクもこれは時間の問題で、ぽつぽつと休業ではなく閉店、倒産するところが出始めている。そんな中でどの企業もなんとか生き残ろうと必死だ。