この頃からメディアにも「n番部屋」の情報が知れ渡り、警察も捜査に動き出した。「博士」の周辺のスタッフらが芋づる式に検挙され、ついに「博士」も逮捕された。警察の発表によれば、「n番部屋」の管理運営者である「博士」の正体は「20代のチョウ氏」であると言う。
事件の概要はおおよそこのようなものである。衝撃的だったのは、この「n番部屋」の利用者の数が、26万人以上にも及ぶということである。
「博士」と呼ばれたチョウ氏が逮捕されて以降、韓国の大統領府である「青瓦台」に対する国民請願ページに、チョウ氏の身元を公開しろという請願が掲載され瞬く間に300万人以上の支持者を集めた。またチョウ氏だけではなく、「n番部屋」の入室者26万人の身元の公開を求める請願も150万を超えた。
その結果、韓国では殺人等の重大犯罪以外では逮捕者の氏名を公表しないが、社会的影響の大きさにSBSが犯人の顔画像公開に踏み切った。博士の正体は25歳のチョウ・ジュビン、仁川の専門大学で学び、性格はおとなしかったが人間関係のトラブルが絶えなかったという。
SBSが「博士」チョウ容疑者の顔写真を公開した
この事件と青瓦台への請願に対し、文在寅大統領もいち早く反応した。
23日、文大統領は、未成年者が含まれたテレグラム「n番部屋」性暴力犯罪に関し「一人の人間の人生を破壊する残忍な行為」と断罪し「警察が重大犯罪として認識し、徹底的に捜査を行い、加害者たちを厳罰に処さなくてはならない」と言った。また「警察は、特別調査チームを強力に構築し、n番部屋全員に対して調査する必要がある」と指示を出した。
カン・ミンソク大統領スポークスマンも「児童青少年16人を含む被害女性たちに対し、大統領として心から慰みを申し上げる。国民の正当な怒りに私も共感する」と大統領自身が語ったと明かした。
青瓦台の関係者らも、「大統領は、デジタル性犯罪を最後まで追跡し、匿名性に隠れれば逃げ延びる事が出来るという犯罪者たちの誤った認識を、これを機会にひっくり返すと言っている」と明かし、本件の捜査に関して、法改正が必要であればそれすれも辞さないとの姿勢を示している。
「博士」やその周辺の関係者ら70名を逮捕した警察は今、「n番部屋」の創設者であるカッカッを追跡している。
インターネット内における性犯罪に、韓国の大統領府と警察が本気で乗り出した。興味本位で性犯罪に加担した26万人の加害者らは、国民の前で羞恥の姿を晒すのか。
<文/安達夕>