「ダイヤモンド・プリンセス」新型コロナ対応の時点から見えていた日本政府の”場当たり的対応”

厚生労働省の対応は、非科学的で専門性を欠く

 国民民主党の厚労部門長で医師の岡本充功衆院議員は、検査時期と精度の観点から政権の対応が非医学的であることを指摘した。 岡本氏:今日(2月20日)、予算委員会を聞いていて思ったのですが、加藤大臣が大変気になる答弁をしていて、「今日降りる500人の方々のいわゆる検体の採取はいつしたのか」という問いに「1週間ほど前の人がいる」ということを認めている。「先週の今頃とった検体で陰性だから」「今日の時点で無症状だった」ということをもってして、「下船をし、自宅待機を求めずに市中で活動することを認める」というのは適切とお考えでしょうか。 岩田氏:これは不適切だと思います。理由は二つあります。一つは、以前にやった検査を受けて、その後に感染してしまった場合は、その検査の陰性結果は全部チャラになってしまうというのが一つ。  もう一つは、すでに事例が出ているのですが、検査というのは結構、感染者であっても陰性と出るのです。後で陽性ということがあるのです。厚労省はずっと間違っているのですが、「検査陰性を根拠に隔離を解除する」という決め方がそもそも間違っている。検査陰性で隔離を解除すると、そのことで発症をしたりする人はたくさんいる。  ですので、(クルーズ船の乗客で)そもそも無症状の人に検査をしても陽性でも陰性でも(14日間隔離するという)判断は変わらないので、検査をすべきではないのです。これを実は、厚労省に申し上げたのですが、すごく嫌な顔をしていて、「みんながやれというのでしょうがないじゃないか」みたいなことをおっしゃる。  私は「科学的に物を決めるべき」という立場で、厚労省は「みんなが求めているので」と政治的に判断をするのです。政治的に判断をしていい時はあるのですが、少なくともクライシス(危機)の時は、リスクミティゲーション(リスクの最少化)をしないといけない。  その時は果断が必要で、「みんながほしがっているから」と言って、特に検査が枯渇しそうになっている時に、検査を無駄遣いするのはまったく許されないことなのです。こういったところも厚生労働省の対応は、非科学的で専門性を欠くなと思っているところです。

半分以上の感染者は検査で陰性になる

岡本氏:今回のクルーズ船に関しては、先生のおっしゃる通りです。ここで貴重な検査の資源を、いま数万とか十万の検査ができるのであればやればいいですけれども、いま4000弱しかできないというのをここでやるのではなくて、もう皆さん降りてもらって、申し訳ないけれどもリセットして、「もう一度、14日間の完全に隔離された生活をしてもらうことにしてはどうか」と私は思っています。  いずれにしても現時点で下船された500人の方、これから降りて行かれる方の中から、検査陽性になる方が出てくると思っています。そのうえで、先生は今回の検査の精度というのは、どのようにお考えになられていますか。 岩田氏:武漢、上海のデータがありまして、検査の精度はいろいろな考え方をするのですが、ここで言うといちばん大事なのは感度です。患者さん、感染者の中で何%ぐらい陽性になるのかですが、ざっくり言うと30%から50%です。これは症状のあるなしでだいぶ変わると思うのですが、半分以上の感染者は検査で陰性になるのです。  このことはすごく重要なことで、「検査の陰性で病気はありませんよ」というためには、少なくとも感度は90%か95%ないといけないのです。50%とか30%というのは、まったく箸にも棒にもかからない数字です。  これをもとに「感染がありません」「感染があります」というのはまったく非医学的な判断になるわけで「隔離解除の基準に検査陰性を使ってはいけない」というのはそのためです。場合によっては、二回三回と検査をして陽性になるのは、コロナウイルスだけではなくて他の感染症でもよく見られる現象なのです。 ※   ※   ※   ※   ※  安倍政権は「検査陰性=感染していない」という非医学的な前提(虚偽情報)をもとに、「COVID-19 製造機」と化したダイヤモンド・プリンセスから約500人もの乗客たちを、14日間の隔離もせずに、公共交通機関使用禁止令も出さずに帰宅させた。先進国では考えられない下船対応をした安倍政権に対して、海外メディアが一斉に辛辣な批判をしたのは至極当然のことといえるのだ(第2回に続く)。 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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