就職のために来日したのに働けない! 暗躍するブローカーや悪徳行政書士

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samenosuke / PIXTA(ピクスタ)

 3月某日、NPO法人「アジアの若者を守る会」代表の沼田惠嗣氏の案内で群馬県太田市を訪ねた。大学卒業後、日本での就職が決まって来日したものの、会社側から就労を拒否されて行き場をなくしていたベトナム人女性がいるという。大卒のベトナム人も日本に来ているのか? 会社が採用者の来日後に就労を拒否するとはどういうことか? 本人を取材した。

就職のために来日した当日に「働けない」

 「私はベトナム人に騙されました」  そう語るのは、昨年末に正規の外国人労働者として来日したチャムさん(仮名・24歳)。一体何があったのか。  「私はベトナムで大学卒業後、一般企業に就職して経理の仕事をしていましたが、人材派遣会社に勤める義理の兄から『日本で働いてみないか』と声がかかりました。義理の兄は元技能実習生で、姉妹も日本で通訳や留学生をしていたので、私も日本で働こうと決めました。それから100万円の借金をして日本語学校へ通いました。紹介者を挟んでベトナム人が経営するアパレル会社に就職が決まり、昨年末に来日しました」(チャム)  ところが、である。日本に到着した当日、紹介者(※ブローカー)から衝撃の連絡が入った。  「『あなたが契約書通りに働くことはできない』という連絡がきたのです。とても驚いて、次の日にベトナム人の社長Aさんと仲介者のBさん、私と姉妹の4人で話し合いました。A社長は『うちの会社では社員ではなくアルバイトとして働いてもらう。雇用契約書の内容とは違うが、シフトを組んで時給制で働いてほしい』と言われました。私は『雇用契約書の内容と違う仕事をしたら不法就労になる。契約書の通り働かせてほしい』と頼みました」  それから数日後、もう一度話し合いの場が設けられた。  「今度は『やっぱり君はアパレルの仕事に向いていないから、うちから派遣するという形で他の仕事を紹介する。宅急便の梱包作業やイチゴ農園の農作業などはどうか。日本人の行政書士に頼むから、書類上の問題はない』と言われましたが、あらためて断りました」  その後、チャムさんは姉妹の家に滞在しながら会社側と交渉を続けたが、「他の仕事なら紹介してやる」の一点張りでお金と時間だけが浪費されていったという。  その後、チャムさんは義理の兄に相談、紆余曲折を経て日本にいるアジアの若者を支援している沼田氏に出会ったという。  「2月上旬にチャムさんからSOSがあり、就職支援と訴訟支援をした。まず入管へ行って会社の不正を通報したが、ビザで定められた活動を3か月行わない場合は滞在期限が切れてしまうため、3月末までに転職する必要があった。幸い群馬県太田市の会社が見つかり、入管での手続きを経て無事に転職することができた。それと同時に弁護士を通じてアパレル会社に金銭的損失の賠償を求めた。こちらのほうは先方と交渉中だ」(沼田)

なぜ留学生は「起業」するのか

 チャムさんは転職先が見つかり、ひとまず状況は落ち着くことができた。しかし、疑問がある。そもそもベトナム人が経営するアパレル会社の実態は、どういうものだったのか。  「実は、その会社はベトナム人留学生が起業したものだった。最近、留学生の起業が増えており、それに伴うトラブルも少なくない。今回の件は留学生問題の一つでもある」(沼田)  留学生が起業? どういうことか。  「留学生は技能実習生と並んで外国人労働者問題として取り上げられてきた。留学生の大半は出稼ぎ労働者で、日本語学校に通いながらアルバイトで稼いでいる。しかし日本語学校を卒業したらビザが切れて、働けなくなってしまう。  そこで留学生は日本語学校から大学や専門学校へ『進学』することでビザを延長することが多かった。留学生は入学金や授業料を支払う代わりに、大学は留学生にビザを与えて身分を保証するという構図だ。昨年、東京福祉大学では大量の留学生が行方不明になっていることが発覚して問題になったが、これはその一例だ」  しかし「進学」でビザを延長するには、入学金や授業料など大学や専門学校に支払う「手数料」が高い。  「そのため、最近留学生の間では『進学』以外にビザを延長する方法が流行っている。それが起業だ。外国人が起業すると経営者として『経営管理ビザ』がもらえる。これで滞在期間が延長できるわけだ。今回、チャムさんが就職したアパレル会社も20代のベトナム人留学生が起業したものだった。会社といっても社員は社長一人、どこから仕入れているのか分からないが、ネットのライブ配信で衣服を紹介し、視聴者に販売していたようだ」  起業すればビザを延長すると同時に、自分のアイデアで稼ぐこともできる。留学生にとって起業はまさに一石二鳥だ。「進学」して時給が安いアルバイトを続けるよりも魅力的だろう。
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