東南アジアでも最も厳しいレベルの入国制限をするベトナム。歩いて感じた「日本人」への警戒感

ベトナムでも「日本は対策が後手後手」イメージ

ノイバイ空港

ノイバイ空港は家族・親族の出迎えも多い中、その人影はなかった。一方で、白タクなどの違法業者もなく、快適ではあった

 外国人がベトナムに入国する際には現在、ベトナム政府が用意する健康関連の自己申告書の提出が義務付けられている。便名や席番号、滞在先、自己診断での健康状態、過去14日以内の渡航先などを報告することが必要で、書類の下部には虚偽の申告が発覚した場合は罰せられることが明示されていた。  申告書はオンライン、航空機内で配られる用紙がある。筆者は3月15日から5日間、ハノイに滞在している。その際の体験では、まず利用したタイ発のベトナム格安航空会社「ベトジェット」はオンライン申告を完了しないとチェックインすらできなかった。  ハノイのノイバイ国際空港では機内で配られる用紙に再度同じ質問があり、記入。それを持って防疫担当官が待つ窓口に向かう。オンライン申告はまったく利用されていなかったが、タイ発の便ということもあって列に並び検疫完了のスタンプが押されるまでにわずか5分しかかからなかった。  一方、日本発便では列に並んでスタンプをもらうまでに2時間かかったという話や、ハノイ在住者は4時間並んだという証言もある。アセアン圏内の発着便でも国によって対応が違うが、日本は国外においてこの新型コロナウィルスへの対処が後手にまわりすぎている印象を持たれているので、警戒がより厳しいものになってしまう。  とはいえ、3月15日時点では、それ以外で入国が困難だったということはなかった。むしろ入国者が少ないので、入国審査場も閑散としていて、スムーズに入国することができた。  しかし、ホテルに到着すると、チェックイン前に過去14日間の行動をすべて書き出すように言われ、白紙に日付とどこにいたかを書かされた。最後にサインをさせられたので、おそらくホテルは公安に届け出ていると考えられる。

「外国人=COVID-19をもたらす存在」という偏見が蔓延

ホアンキエム湖

ホアンキエム湖の北側はバイクや車すら少なくなっている

 ハノイ市民の感情も揺れ動いている状態だ。多くが「COVID-19は外国人がもたらすもの」と考えているようで、我々外国人を見る目が冷たいような気がする。  ハノイ在住の日本人会社員はこう語る。 「ホアンキエム区の麺類食堂でほかにベトナム人客がいるにも関わらず、注文時に、ない、と言われて追い出された」  ホアンキエム区はホアンキエム湖を中心にしたエリアで、湖の北側はいわゆる旧市街と呼ばれる。欧米人を中心に訪問者が多く、ここにはショッピングスポットや飲食店、宿泊施設が集まる。しかし、外国人はほとんど歩いていない。旧市街はハノイ随一の服飾関係の市場でもあるので、通常はベトナム人の往来も多いが、そんなベトナム人ですら激減していた。  筆者も最初の夜に旧市街の2軒のバーに足を運んでみた。明らかに空席が目立っていたにもかかわらず「満席です」と入店を拒否されている。
ホアンキエム湖の北側の一角

上の写真と同じエリアは、平時には週末は歩行者天国になり、旧市街の一部はナイトマーケットになる。今はそれも中止だ。(2017年12月撮影)

 ベトナム政府は中国人と韓国人の入国に対してかなり強硬な手段を採っている。ベトナム人もそれに倣っているのかもしれないが、日本人・韓国人・中国人の見分けがつきにくいことから「疑わしきは」ということで拒否された可能性もある。  ほかの在住日本人の話では、同じ店にほぼ同じ時間に行ったところ、なんら問題なく入店できたという話もあるが、現実的にどこでも筆者の顔を見ると嫌そうな顔をするベトナム人が多く、差別・区別されていることは間違いないと感じる。一方で、営業中の飲食店も多く、外国人を拒否する店の方が圧倒的に少ないのも事実だ。だから、滞在にはあまり大きな影響はないが、しばらくはベトナム観光はおすすめできないというのが、実際にベトナム国内にいる筆者の本音である。  ベトナムは社会主義国なので、トップダウンで対策が決定され実施される。「日々」どころか「数時間」で状況が変化しているので、ここ1か月あるいは3ヶ月くらいの間にベトナム渡航を検討されている方は、常に情勢を確認していた方がいいだろう。 <取材・文・撮影/高田胤臣>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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