大企業に入れる一握りのエリートといえど一寸先は闇だ
韓国映画『パラサイト/半地下の家族』がアジア映画として史上初のアカデミー賞4部門を受賞し、韓国の存在が一躍、世界に轟いた。同映画は韓国社会の深刻な貧困問題を描き、観る者に衝撃を与えたが、そこでも描き切れないほどに実際の韓国社会には闇が溢れている。その惨状は一部で「ヘル朝鮮」と揶揄されるほどだ。そんな八方塞がりの韓国の実態を詳しくお伝えする。
大企業に勤めても40代定年!? 中高年でゼロからスタート
韓国では大企業が日本よりもはるかに狭き門だ。だが尋常ではない競争を勝ち抜いて入社しても、激務に耐えきれず早々に辞める人も多い。昇進試験の評価が悪かったり、40代のうちに役員コースに乗れなければ自主退職を迫られる「大企業40代定年説」という現実がある。50代で役員になっても、先はそれほど長くはない。
50代まで熾烈な競争を勝ち抜いて、数少ない役員となれても、在任期間は短い(カッコ内は退任時の年齢)
実際、退職平均年齢は49.1歳(’18年韓国統計庁調べ)。退職後、子供の学費を支払えず車や家を売るケースもある。辞めた後は中小企業に入り直すか、アルバイトをするか、自営業かの三択となるが、50代からではどちらも茨の道だ。6年前まで、韓国で誰もが知る財閥の系列会社に勤め年収900万円を得ていたチ・ジョンスさん(仮名・48歳)は、このように話す。
「大企業の社員には傲慢になる人も多く、一般人を見下し、飲み屋で怒鳴りつける人もいます。自分が仮に出世してもやりがいはなかったし、そんな集団の一員でいるのはもうウンザリ。それで、昔から付き合いのある仲間と3人でホットク(おやき)屋を開くことにしました」
大企業に新卒で入社したとしても、40代半ばで退職することになる。その後の受け皿は乏しく、ゼロスタートに等しい
辞める際は家族の大反対に遭った。年収も社員時代の3分の1になり、妻と揉めることも多い。
「韓国ではよく仲間と共同で店を出します。仲たがいしない限り(笑)支え合っていけるので心配ありません」と話すチさんだが、将来の保証はない。とある研究者は、大企業出身者は再就職しても7割が新たな職場である中小企業の社風に適応できず1年以内に辞めてしまうとも述べている。韓国で安定した会社員人生を終えられるのは、ほんのひと握りなのだ。