AIによる現実の補完と改変という「偽造現実」。問われる真実

コラージュ猫の顔

Alexas_Fotos via Pixabay

高画質化アプリ「Remini」がバズる

 2月の半ばに「Remini」というアプリがバズった。低解質の画像を、AI を利用して高画質化してくれるアプリだ。粗い写真から鮮明な写真を生成してくれる。  このアプリを使って、ネットで有名な人物写真を高画質化する人が多くいた。顔の形が分かるものならば、かなりきれいな画像を作り出してくれる。あまりにも低解質の写真の場合は、本物とは違う顔が産み出される。  AI を利用した補完は、画像を拡大して滑らかにする処理とは違う。画像を拡大して滑らかにする処理では、拡大して粗くなった画素のあいだを埋めてきれいに繋ぐ。  推測だが「Remini」は、GAN (Generative Adversarial Networks 敵対的生成ネットワーク)を利用、あるいは応用しているのではないか。GAN は、データから特徴を学習することで、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換できる技術だ(参照:ブルーバックス)。  こうした技術を利用した補完は、ある意味ではモンタージュ写真に近い。犯罪捜査で利用されるモンタージュ写真は、顔の特徴を思い出して、本物に近い写真を作る。AI は画像の特徴を学習しており、もっともらしい顔や人体、風景を作り出す。  そのため、あまりにも低解像度の写真の場合は、上手く再現できない。そして、学習したデータを元にした顔を提示する。欧米人の顔を学習していた場合は、ディテールの推測ができないと欧米人っぽい顔を返すことになる。  そのため、何も考えずに犯罪捜査に使えば冤罪を生む。物凄く小さな犯人の顔を AI で拡大してみたら、別人の顔が現れるといったことが起こりうる。あくまで細部の補完に留めるべきだ。  こうした AI を利用して、画像や動画を補完する技術は、近年多く見られる。今回は、そうした話について触れる。

「AVモザイク除去」ができるAIに業界が震撼

 同じく2月半ばの記事だが、AV のモザイクが除去できる AI の話が話題になった。ビデオテープ時代に物心付いていた男性は、雑誌などでモザイク除去機の広告を見たり、噂を聞いたりしたことがあるだろう。そうした機能が、AI によって可能になったという話だ。  先ほどの高画質化アプリと同じように、隠されている部分を、学習したデータから推測する。そのため、本物の部位の画像が現れるわけではない。しかし、モザイク部分を除去したような効果がある。  アダルトと AI による画像加工の関係は、今に始まったことではない。アダルト映像の顔を、芸能人など別人のものにすげ替えるフェイクポルノというものがある。猥褻な動画に出演していない人物の動画が、多く作られて問題になっている。  仕組みはそれほど突飛なものではない。その昔、アイドルコラージュ、通称アイコラというものがあった。主に、アイドルの顔と、猥褻な画像の体を合成したものだ。印刷物を切り貼りしていた時代から存在している。また、画像編集ソフトを使い、本物と見分けが付かないレベルのものまで様々ある。  こうしたアイコラは1枚の画像を加工したものだ。フェイクポルノでは、こうした作業を動画でおこなう。動画は、1秒あたり数十枚の大量の画像で構成されている。それらを全て修正すれば、動画のアイコラができる。人手ならば大変な作業でも、AI なら文句を言わずにやってくれる。
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捏造される現実世界
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