火祭り延期が注目を集めるなか、バレンシア州のカステリョン市でもほぼ同時に同市の歴史を辿る祭り「マグダレーナ祭り」(ラ・マグダレナ=La Magdalena)が行われるが、これも延期となった。
火祭りとラ・マグダレナの延期で経済的に7億ユーロ(830億円)のインパクトがあると、プッチュ州知事は指摘している。(参照:「
Las Provancia」)
例えば、ホテルは2500万から2700万ユーロ(29億8000万円―32億1000万円)の売上を逃したことになると指摘されている。
また、火祭りの期間中は花の需要が増大することになっている。バレンシアの女神が奉ってある教会の前に組まれた櫓に市内の各ブロックからの代表団が花束を贈呈して櫓に飾って行くのであるが、同様に各ブロックで民族衣装をまとった女性がそれぞれ花束を持って市内を行進することになっている。その為、特に赤と白のカーネーションの需要が急増するんである。凡そ、6万束だ。今回は行事が延期となったことで寿命の短い花は7月まで持たない。よく持って10日間だ。その多くは捨てねばならないことになる。その損出額は凡そ500万ユーロ(6000万円)と見積もられている。需要に応える為にコロンビアやエクアドルからも輸入したものも保管されていた。
9割が海外からの訪問客だったがそれもなくなった……
昨年の火祭りの訪問客は93万1639人と公表されている。10人の内の9人はスペイン国内からの訪問客で、一番多かったのはマドリードからで全体の25%で、その数はおよそ25万人。10人の一人は外人で一番多かったのがイタリア人の20%。それ以外に、ドイツ、英国、フランス、オランダ、米国、スウェーデン、オーストリア、ポーランドといった国々からの訪問であったそうだ。日本からも毎年僅かではあるが訪問者がいる。(参照:「
El Periodico」)
ということで、現在新型コロナウイルスで欧州内でも感染率の高いマドリードとイタリアが昨年の火祭り訪問客で国内と外国でトップの位置を占めていたというのは皮肉である。
現在スペインでは2200人余りが感染しているが、その半数がマドリードが占めている。またスペイン政府は現在イタリアからの直行便のスペインへの入国できないことになっている。
1年前の火祭りの時にその1年後はこのような事態になるとは誰が想像したであろうか。
<文/白石和幸>